大驚失色



「ああ、此処に居たか。」

白茶色の軍服の集団の中で一人、淡墨色の法衣に身を包むルーヴィンは殊更に周囲の目を引いた。

「聖王より召致だ、リュユージュ。謁見の許可が出たとの事だ。」

食堂にて大分遅い昼食を摂っていたバルヒェットは、その言葉が放たれた瞬間に素早く席を離れた。

「直ぐに上着を。」

「済まない、助かるよ。」

リュユージュも食事を止めると最後に一口だけ水に口を付け、身支度をするべく席を立った。













「今…、何と?」

普段は玉座から微動だにしないフェンヴェルグであるが、リュユージュの言葉を聞き僅かに身を乗り出した。白銀色の髪が揺れる。

「退役したいと、そう申したか?」

フェンヴェルグは動揺を禁じ得ない表情で、彼にそう問う。

「左様で御座います。」

「理由を述べよ。」

「尊公に絶対の勝利を捧げる為で御座います、聖王陛下。」

「我に勝利を?しかし、貴様は現在でも充分に成しているではないか。」

「いいえ。到底、充分とは言い難く存じます。」

フェンヴェルグは暫し黙考した後、口を開いた。

「良いだろう。貴様の腹の内を明かしてみよ。」

「有り難き御言葉、深謝致します。」

一礼をすると、蜂蜜色の髪の毛がふわりとリュユージュの頬を撫でた。

「我々十字軍は古来より水軍を持たずに来た故、世界最強も陸戦に限った評価。其処を強化したく、申し上げます。」

彼は更に言葉を続けた。

「現存の海軍とは違う、国防に特化した海上戦と陸上戦の両方に長けた外征専門の特殊部隊を新設したいのです。」

フェンヴェルグは頬杖を付きながら、静かにその言葉に耳を傾けている。

「しかしその為には、必要不可欠な人物が一人居ります。『彼』は僕の、延いては、国家の羅針盤と成り得る男です。」

「ほう、その者とは?」

フェンヴェルグは好奇の視線を投げ掛けた。

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