面従腹背



プエルトの首都、アレグレ。此処は同時に、国内最大の都市でもある。



用意したスーツに身を包んだアンバーは、高層ビルが建ち並ぶ舗装された歩道を革靴で姿勢良く歩いた。

ふと、おおよそ自分とは縁のなさそうな宝石店が彼の目に留まる。煌びやかな店内では、一組の男女が笑顔で語らいながら宝石を手に取っていた。

その一方で、路地裏には数人のうらぶれた男達が身を寄せ合って座り込んでいる。彼等は皆一様に痩せ衰えた身体に擦り切れた衣服をまとい、生気の無い濁った瞳をしていた。



貧困と富裕。

陰と陽の、表裏一体。



━━まるで俺みたいだな。

彼はショーウインドウに映し出された自分の姿を一瞥すると、整えられた身形に嫌悪感を覚えた。






アンバーはパラッツィに指定された高級ホテルに到着した。

すると直ぐ彼の視界に、ロビーのソファに大股で座る黒いスーツの二人組の男達が入って来た。

男達は周囲を威圧しながら警戒している。豪華なホテルの優雅な雰囲気に似つかわしくない、異様な光景だ。

しかしアンバーは躊躇なく、革靴の踵をこつこつと小気味良く鳴らしながら男達に歩み寄った。

「パラッツィ・ファミリーの人間か?クォーザイト・バルシュだ。」

彼は偽名を使い、男達にそう名乗る。

「お前が例の新入りか?よろしくお願いします、が抜けてるぜ?」

「止めろ、行くぞ。」

アンバーに対して威嚇する男を、もう一人が諫める。彼は灰緑色の瞳でアンバーを打見すると、エレベーターに乗り込むよう指示をした。

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W.A


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