一触即発



窓の外に立ち込めている、暗雲。ベネディクトの表情もそれと同様に、非常に重々しいものであった。

「来月一日(イッピ)よりアークライトに駐留の許可が出たと、バレンティナから正式に通達が来ました。」

彼女はクラウス等、呼集した面々にそう告げた。

「来週より我々も王国軍と共に国境警備に参加し、厳戒態勢を敷きます。」

「なあ、それには誰が行くんだい?俺、する事なくて暇だから行ってやってもいいぜ。」

ヘルガヒルデの発言に、全員が驚愕する。

「貴女が出て行くまでもないわよ。と言うか、出て来られたら彼等も大変だわ。」

「はあ?何が大変だってんだ?」

「それが分からない貴女は少し黙るべきだ。元帥。」

ヘルガヒルデの隣でリュユージュが冷淡に言い放つ。その遣り取りを耳にしたバルヒェットは、咳払いをして苦笑を誤魔化した。






「何だよ、もう。説教なら俺、帰るぞ。」

ベネディクトと二人きりになった会議室でヘルガヒルデは気怠そうに溜息を吐くも、思惑とは裏腹に非常に切迫した碧眼を向けられた。

「説教なんかしないわよ。」

ベネディクトはそう前置きをすると、呟く様に言った。

「このままだと恐らく、世界的な戦争になるわ。」

「はあ?一体、何を根拠に。」

「分からない。でも、間違いないのよ。」

「おいおい。到底、将軍様の発言とは思えねえな。」

皮肉めいた口調のヘルガヒルデに対し、ベネディクトは再び真剣な眼差しを向けた。

「『未来が視える者』が、そう言っているの。その人物は、王妃の懐妊と王女の誕生を正確に予言したわ。」

予想を逸脱した解答に、ヘルガヒルデは嘲笑はせずに素直に困惑を見せた。

「うーん…。俺、そういう類のあんま信じてないからなー…。」

ぽつぽつと降り出した雨粒が、窓硝子に映ったベネディクトの頬を濡らす。

「信じなくても、笑っても良い。ただ私には、何も見えないし分からないのよ。」

焦眉の表情のベネディクトは、懇願にも似た視線を向けた。



「いいかい、ベティ。俺は正直、手前がリュークにした事を許すつもりは一生ない。」

その言葉を聞き、ベネディクトは身を硬くした。

「しかし、当主としては感謝しているんだ。本当にね。」

-61-

[] | []

しおりを挟む


目次 表紙

W.A


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -