男達に連れられて到着したのは、ホテルの最上階だった。
先頭の男がカードキーでセキュリティロックを解除する。ピーッという聞き慣れない電子音が、アンバーの頭に響いた。
開かれた扉の奥には、更に数人のボディーガードが居た。皆一様に、無言で視線をアンバーに向ける。
全員、同じ様にパラッツィに雇用された者達だろう。しかし、アンバーも含めて彼等が護衛すべき人物はパラッツィ本人ではなく、ビオレッタと言う名の彼の愛娘なのであった。
アンバーは柔らかい絨毯の敷き詰められた居室の中央で待機するよう、先程の男に指示された。
その男は更に奥の部屋へと向かうと、扉をノックした。
「ビオレッタお嬢様。新しいボディーガードを連れて参りました。」
「んー…。」
気怠そうな少女の声が耳に届く。
そして暫くした後、ぺたぺたと近付いて来る小さな足音が聞こえて来た。
━━…子供?
アンバーはスラックスの折り目に指先を添わせると、腰を折り曲げて丁寧に御辞儀をした。
「クォーザイト・バルシュと申します。」
「んー…。顔、上げて。」
彼はその声と共に、ゆっくりと背筋を伸ばす。
視界を埋めて行く少女の姿に、アンバーは驚愕の余り言葉を失った。
彼女は何とも、だらしのない格好をしていた。
深夜や早朝でないにも関わらず薄手の寝間着のままであったし、何より室内用の上履きすら履いては居らず、素足で立っていた。
しかし彼が愕然としていたのは、それだけが理由ではなかった。
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W.A