無為自然



窓から射し込む柔らかな光と、小鳥達の可愛らしい囀り。

普段と変わらない清々しい朝を迎えるも、アリュミーナは起床と同時に溜息を吐いた。

━━いよいよ、今日ね。






「大丈夫よ、そんなに緊張しなくても。」

「は、はい。」

アリュミーナは年上の女性に付き添われ、宮殿の敷地内に在るとある老婆の元を訪れた。

この付き添いの女性はウィトネスの侍女の一人である。言わば、彼女の仕事仲間だ。

「婆様、おはようございます。」

アリュミーナが玄関の電鈴を鳴らして訪問を知らせると、扉がゆっくりと開かれた。

「お待ち申しておりましたよ、アリーナ様。」

腰の曲がった人の良さそうな老婆が顔を出し、二人を招き入れる。しかしアリュミーナは口の端を硬く結び、未だ俯いたままだ。

「つい先頃、アリーナ様を取り上げさせて頂いたと思ったら。本に、月日の経つのは早いもので。」

「え、ええ。」

彼女は胸の前で手を握って落ち着かない様子で、老婆に案内された部屋をきょろきょろと見回す。

「こちらへお願い致します。」

老婆が示したのは、独特の形をした椅子だった。

椅子であるのに臀部の部分が無いという見慣れないその形容を前に、アリュミーナは当惑を隠せずにいた。

「ああ、下着はお取り下さいませね。」

「は、はい。」

その椅子は内診に使用されるものだった。

足を大きく広げて性器を剥き出しにしなければならないという行為に対する心情を推し量り、老婆は彼女の下腹部に薄布を掛けた。

この老婆は一族の御殿医であり、産婆なのである。

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W.A


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