傲岸不遜
じりじりと容赦なく照り付ける太陽と、砂埃の交じった旋風。
彼等は今日もプエルト連邦の乾いた土地を縦断し、兵器の輸送をしていた。
「せっかく腕の立つ剣士がいるってのに、こんな仕事ばっかじゃ宝の持ち腐れだぜ。」
汗を拭いながら黙々と作業をこなしているアンバーの隣で、煙草を吹かしているセブンはそうぼやく。それに対して、若い男が苦笑しながら答えた。
「でも親分。こないだアンバーに助けられたじゃないっスか。」
つい先日、彼等は過激派として非常に有名な、とある宗教団体の武装集団に襲われた。軍事国家であるバレンティナ製の精度の高い兵器を喉から手が出る程欲している輩が、この国には無数にいる。
アンバーはほぼ一人で、そのような集団を掃討したのだ。
「それにしても、プエルト政府はこんなに大量の兵器を輸入してどうするんスかね。」
「さあな。」
政府が使用した形跡はない。
何故なら、彼等が輸送しているような大型の火器が使用されたならば、必ず世間の耳目を集めるだろう。
「こんな馬鹿デカい大砲、暴動の鎮圧って感じじゃねえしな。かと言って、町が一つふっ飛んだって話しも全く聞かねえし。」
「どっかと戦争でもする気っスかね?」
彼等のその会話が、アンバーの耳に残った。
宵闇が迫る頃、彼等は作業を終えた。
「たまには街まで行くか?」
セブンのその一言に、男達は歓呼を上げる。
「親分、太っ腹!」
「誰もおごるって言ってねえぞ。」
アンバーが眉間に皺を寄せてセブンを凝視していると、その視線に気が付いた彼が振り返った。
「お前の分は出してやるから、一緒に行こうぜ。」
「いや、いい。」
そう即答したアンバーには大体の予想が付いていた。彼等の目的地は賭博か酒場か、色町であろう。
そのどれにも、到底興味が湧かなかった。
「いいから。遠慮なんかするなって。」
「していない。」
「しかしまあ、お前もつくづく愛想のない奴だな。そんな仏頂面してないで、たまには付き合えって。」
くわえ煙草のセブンに肩を組まれ、アンバーは半ば無理矢理に連れて行かれた。
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