報本反始



パクスキヴィタス大陸の最西に位置する、プエルト連邦国家。

世界有数の多民族国家であり、異教徒同士による衝突や、主権及び領土拡大の為の紛争が絶えない国だ。

晴れ渡った日には、外港より水平線の向こうにバレンティナ公国を臨む事が出来る。



キャンベル王国とは同盟を結んでいるが、その一方では戦前と変わらずバレンティナ公国とも未だ盛んに国交や貿易が続けられている。

正式に終戦宣言はされたものの、事実上キャンベルとは冷戦状態にあるバレンティナに対して、プエルトが友好的な理由の一つに他民族国家である事が挙げられる。

有史以前より民族毎にそれぞれの宗教を信仰しており、ヴェラクルース神使教が然程布教していないのだ。

故に、世界宗教の宗主であるクロイツァーも、それを支配するキャンベルも、彼等にとっては関心が及ぶ範囲ではない。

キャンベルとしても、紛争の耐えない不安定な国情のプエルトが宥和政策に応じるならばそれで可とし、要は衝突を避けれれば良かったのだ。

国際条約で同盟を結んでいる以上、プエルトとしても表立ってキャンベルを敵に回すのは得策ではないと、それは重々承知している様だ。

結論として、互いに距離を保ちながらの外交が現在も続いている。






今日もまた一人、人種の坩堝であるこの街の住人が増えた。

時折、乾いた風が吹き荒ぶ。舞い上がった砂埃を避ける様に、人々は俯きながら一人の男の前を慌ただしく通り過ぎて行った。

━━どの辺りだ、ここは。

男は喧騒の中を目的も無く、歩き続ける。

幸い、懐は温かい。

適当に宿を取り、暫くゆっくり過ごそうと彼は考えていた。

しかしそれも、この様な治安が乱れている地域では叶わぬ夢となりそうだ。

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W.A


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