会者定離
「おはようございます!リュユージュ隊長!」
「おはようございます!」
軍服に身を包んだリュユージュが、取り決められた時間きっかりに軍営に姿を現した。
「おはよう。」
レオンハルトは隊員達と共に敬礼での出迎えを終えると、用意された書類を手に取り、読み上げた。
「本日の任務は、囚人の護送です。目的地はバースです。」
バース及びデイ・ルイスの復興に一般の国民や企業からも有志を募ったが、充分と言える人数は集まらなかった。
それに無償という訳にはいかず、今後の予算の算出に倦ね果てている国家にとって有志の募集は最善とは言い難い。
そこで、労働の対価が必要ない囚人が駆り出される事となったのだ。
レオンハルトは説明を続ける。
「リュユージュ隊長は、積み込みの監視をしていて下されば結構です。自分と他隊員はバースまで同行します。以上です。」
「は!」
第二隊はそれぞれの馬を駆り、刑務所へと向かった。
其処は、異様な迄に陰鬱な雰囲気に包まれていた。
果てしなく広がる砂丘に位置するコンクリートの壁と有刺鉄線の鉄条網を、リュユージュはぐるりと見渡した。
「なんにも変わってないな。」
彼にとっては以前の職場でもあるが、再訪を喜ぶ様な場所でもない。
「どうぞ、こちらです。」
看守が所長の元へ第二隊を案内する。
「皆様、おはようございます。リュユージュ様、ご無沙汰しております。お変わり御座いませんか?」
「うん。」
リュユージュと所長は握手を交わす。
「出発の準備は完了しております。こちらへ。」
所長を先頭に、第二隊は廊下を進んだ。
「重刑者が一人おります。まだ拿捕されたばかりで裁判が行われてませんので確定はしておりませんが、恐らくは死刑かと。」
「だから僕が呼ばれたのか。ところで、そんな事件あった?」
死刑判決が下る程の重大な犯罪が起きれば、必ずリュユージュの耳にも入る筈だ。
「ああ、いえ。再犯です。」
再犯により加重された刑罰は通常より重く、初犯と同様には扱われない。
故に重大犯罪でなくとも、死刑判決が下される事は決して珍しくないのだ。
まるで猛獣を飼育するかの様な厳重な監房に、件の重刑者が繋がれていた。
灰色の囚人服も、丸刈りの頭髪も、他の囚人と何ら変わりない。
しかし、額の『逆十字の烙印』は、服役しているどの囚人にも持ち得ないものだった。
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