格物究理



「所謂、女傑族だ。国民は女性に限定されている。」

僅かな部分でしかないであろう、この特徴を聞いただけでもドラクールは充分に面食らった。

「だが…、それでは繁栄しないだろう。細胞分裂でもするのか?」

「当然、近隣諸国との『外交』に依願、依存している。」

ここでドラクールはもう一つの疑問を口にする。

「男児が産まれる事もあるだろう?」

「バレンティナは領土こそ狭小だが、キャンベルの様な大国からの外圧に抵抗出来る程の莫大な財源がある。」



カーミラは一呼吸置いて続けた。



「奴隷の輸出産業だ。」



辛苦そのものの彼女の表情に、ドラクールは違和感を隠せなかった。

「だが全てが売られる訳ではなく、障害者にして国内で奴隷にされている者も多くいる。」

微かに震えている拳を、彼は見逃してはいなかった。

「他の際立った点は、徴兵制度がある事だ。制度自体は珍しくはないが、この時に右の乳房を切り取られるんだ。」

「な、…。」

余りにも稀有な行為に、ドラクールは言葉に詰まってしまった。

「矢を射る時に邪魔だからな。」

カーミラは弓を引く動作をして見せた。

「だから乳房の有る無しで、バレンティナの国民かどうかを簡単に判別出来るぞ。」

いつの間にか平静を取り戻していた彼女は、小さな窓に切り取られた哀れな空を眺めながらそう言った。

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