意気昂然



ドラクールが軋む身体で馬に揺られている時分と重なって、彼に扮装しているカーミラの元には朝食が運ばれて来ていた。

彼女は給仕している人物を毛布の隙間から覗き見る。

金色の直毛を持つ、長身の男性。

━━ルーヴィン・クロイツァーね。妹の方のベネディクトが、坊やを追って行ったのかしら。

そのまま無言で立ち去って行ったルーヴィンに、以前の様に自分の瘴気が感取されてはいないと安堵する。

━━私にまで反応するなんて、さすがは純血を遵守しているクロイツァー家だわ。

事実、カーミラ自身は魔物でも何でもない。ただ彼女は、闇の者と”とある契約”を交わしているだけに過ぎないのだ。

その残滓とも言うべき瘴気を封じ込めておくには限度がある。

それが時間制限の真意だった。









一方、かなりの体力を消耗していたドラクールは馬の変化に気付いて顔を上げた。

馬が、走るのを止めたのだ。

砂塵の舞う中。前方に聳え立つ建造物を目にした彼は、目的地に到着した事を知った。

馬から降りて周囲を見渡すと細い水の流れがあったので、彼は手綱を引いて其処へ足を向けた。

しかし近付くにつれてそれは川などではなく、垂れ流しの汚水だと分かった。

「飲めそうにないな…。」

彼はそう呟くと、馬の背を撫でた。

「少し待ってろ。」

摩天城に行けば水は手に入ると、彼は楽観していたが、後にそれは誤りであったと思い知る羽目になる。

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W.A


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