永久不変
「珍しいわね?君から私を呼ぶなんて。」
燃える様な深紅の髪のその女は、無遠慮にドラクールのベッドに忍び込んで来た。
「…呼んでない。」
不機嫌そうに背を向けたままのドラクールに対し、彼女はふっと苦笑を漏らす。
布越しのその温もりに、彼は酷く安堵してしまう。
━━いつもそうなんだ、どうして。
無償に泣きたくなる。
ささくれ立っている心が静まり、落ち着いて。
彼は声を上げて、泣きたくなるのだ。
「カーミラ。」
ドラクールは体を起こし、女の名を呼ぶ。
「あんたは一体、何者なんだ?」
質問の意味が飲み込めず、カーミラは惚けた表情を見せる。
一瞬だけの、刹那。
月を連想させる金色の瞳が、悲しみに揺らいだ。
「私?私は何者でもないわ。君のものよ。」
彼女は猫の様に膝に擦り寄り、下からドラクールをじっと見上げている。
「君が必要としてる限り、私は君の許へ必ず来ます。」
そして柔らかく彼を抱き締めた。
「大丈夫よ、私はいつでも君と共にある。安心なさい。」
ぽんぽん、と、まるで幼子をあやすみたいに背中を軽く叩く。
「何も不安なんか、感じていない。」
カーミラの言葉にささやかな反抗をし、それでもドラクールは静かに目を閉じた。
━━そうか。多分、こんな感じなのだろう。
母親の胎内で眠る赤子の様な安らかな感情に包まれ、彼は意識を手放した。
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W.A