盤根錯節



「あら、ご機嫌悪そうね?」



翌朝。

ドラクールは未だベッドの中だが、朝食を運んで来たベネディクトには背中を見ただけでそれが分かる様だ。



「黙れ。」

普段ならドラクールが軽口に反応する事はない。ベネディクトは僅かに面食らっていた。



「昨日、俺の朝飯がなかった。」

「そうね、御免なさい。」

悪怯れる様子など微塵もなく、彼女はにっこり微笑んでいる。

「それどころか一体何なんだ。他の奴を寄越すな。」

昨日の昼食と夕食はルーヴィンが給仕していた。

「兄さん、料理上手でしょう?」

「そんな事はどうでもいい!」

表情を一切崩さないベネディクトに腹を立てたドラクールが、漸くベッドから出て来た。



「こっちは顔も合わせたくねェんだよ!」

甲冑姿の騎士とはいえ、ドラクールは丸腰の女相手に掴みかかった。

しかしそれでも怖めず臆せず、笑顔のベネディクト。それが殊更、彼の癪に触る。

「そうね。それじゃあ私が来れない時には、必ず兄さんに頼む事にするわ。」

ドラクールは反論する気も失せ、力なくベッドにへたりこんだ。頭を抱えて深い溜息を吐く。

「俺に嫌がらせして何になる?」

「違うわよ。」

彼女はテーブルにトレーを静かに置いた。

「どのみち、私か兄さんしかいないもの。」

ベネディクトはドラクールに朝食を勧めた。

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