‐追憶‐



俺はただただ、其処で泣いていた。

腐った肉と、赤黒い露の狭間で。












━━また、あの夢か。

ドラクールは気怠い体を起こした。



彼は時折、同じ夢を見る。

その中の自分は幼い子供で、いつも泣いているのだ。

泣いているの理由は多過ぎて分からない。



飢餓と、

寒気と、

恐怖と、

閑寂と━━…、



孤独。






━━それが一体何だってんだ。今ならそんなの恐くもなんともない。

俺には、何一つないのだから。

守るものどころか、失うものすら持ち合わせてないんだ。

世界が明日終わろうとも、俺は構わない。






よほど自尊心が許さないのだろうか。

自身を蔑み、嘲る。






━━お前が恐れていたものが、全て此処にあるぞ。



幼少の自身との対話。

現在、飢えと寒さはないがそれ以外は変わらずに有る。



━━お前が恐れていたものの中で俺は今、生きているんだ。






それは虚飾という名の艱難。

-18-

[] | []

しおりを挟む


目次 表紙

W.A


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -