‐追憶‐
俺はただただ、其処で泣いていた。
腐った肉と、赤黒い露の狭間で。
━━また、あの夢か。
ドラクールは気怠い体を起こした。
彼は時折、同じ夢を見る。
その中の自分は幼い子供で、いつも泣いているのだ。
泣いているの理由は多過ぎて分からない。
飢餓と、
寒気と、
恐怖と、
閑寂と━━…、
孤独。
━━それが一体何だってんだ。今ならそんなの恐くもなんともない。
俺には、何一つないのだから。
守るものどころか、失うものすら持ち合わせてないんだ。
世界が明日終わろうとも、俺は構わない。
よほど自尊心が許さないのだろうか。
自身を蔑み、嘲る。
━━お前が恐れていたものが、全て此処にあるぞ。
幼少の自身との対話。
現在、飢えと寒さはないがそれ以外は変わらずに有る。
━━お前が恐れていたものの中で俺は今、生きているんだ。
それは虚飾という名の艱難。
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