日常平時
「ウィトネス様ーっ!!」
朝から元気の良い、甲高い声が宮殿に響き渡る。
それを扉の向こうから聞いている者達は「ああ、またか」と、思っているに違いない。
「な…っ、一体何をやってるんですかーっ!?」
「…うぅ〜ん?」
ウィトネスはシーツに包まり、けたたましい声から逃れようと寝返りを打つ。
「早く起きて下さい!!何時だと思っているんですか!?」
まくしたてる彼女の名は、アリュミーナ。王女付きの侍女の一人である。
だがその仕事内容は侍女と呼ぶより、子守りに等しかった。
「う〜ん?」
ウィトネスが目を擦りながら漸く時計を見ると、朝食の時間が少し過ぎていた頃だった。
「まだ来ないと思ったら…、全く!」
アリュミーナはウィトネスをシーツから引っぺがし、無理矢理に体を起こさせる。
仮にも王女に対してこの態度、下手をしたら懲戒ものだろう。
しかしそこは彼女たちの仲。
ウィトネスは成人女性ばかりの従者の中、一番年の近いアリュミーナを格別に慕っていた。
アリュミーナもまたウィトネスを実の妹の様に、或いはそれ以上に慈しみ大切に想っていた。
飽く迄もこの二人は『王女と従者』である。
けれどそれを越えた繋がりは、確かに存在していた。
「早くお召し替え下さい!!」
「はぁ〜い…。」
端から見るとまるで主従関係が反転したかの様だ。
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W.A