「はい、これ。約束のお金。」
アンジェリカは彼等にお茶に出すと、次は札束をテーブルに置いた。
「な、何これ!?」
彼等は非常に驚いている。それはギルバートも同じだった。
「私、十万って言ったでしょ。」
「いや、すげェあるじゃん!」
「あんた達、五人でしょ。だから一人十万で、五十万ね。」
「え!?オレら、十万を山分けするつもりだったんだけど!?」
「そうなの?私は別にどっちでもいいけど。」
ギルバートは漸く理解した。アンジェリカは大金を掛け、自分を探していたのだと。
「お前…。こんな金額、一人でどうやって用意した?」
「安心して、ギルバート。体、売ったりしてないから。」
アンジェリカは有無を言わせぬ瞳で、ギルバートを見つめた。
自分の信念を貫く時、彼女はいつもこの表情をする。そしてギルバートはその度、気圧されてしまうのだ。
「マジでいらねえって。それより、こんだけ金があるなら引っ越ししなよ、姉さん。」
アンジェリカの借りている部屋は今にも倒れて壊れそうな程、古くて汚いものだった。風呂は室内に無理矢理に簡易シャワーを取り付けただけのもので排水は出来るが、扉すら無い。
「これは、そういう事に使って良いお金じゃないの。」
結局彼等は一人二万ずつ受け取ると、アンジェリカの部屋を後にした。
「ねえ、ギルバート。私これから仕事だから、代わりにこれ返して来てくれる?」
アンジェリカがベッドの下から取り出した鞄の中には、更に大量の札束が詰め込まれていた。
「な…っ!?」
「丁度、学校から帰って来る時間だわ。」
-233-
[←] | [→]
しおりを挟む
目次 表紙
W.A