まるで深い憂愁を秘めたかの様な、茜色。

待ち草臥(クタビ)れた様子のアンジェリカが、夕陽に照らされた屋敷の正門でリュユージュを出迎えた。

「おかえり。やっと帰って来た。」

「ただいま。」

彼はそれを意にも介さず、レオンハルトに解錠をする様に促す。

「私、朝からずっと待ってたんだけど。一体、どこ行ってたのよ。」

「学校。」

「へえ、それ制服なんだ。似合ってるじゃない。」

詰襟の学生服姿をからかう様な口調のアンジェリカの前を素通りし、リュユージュは屋敷へと歩を進めた。

しかし、次の瞬間。彼はふと足を止めてアンジェリカを振り返ると、彼女に向かって手を伸ばした。

そしてその荷物を、乱暴に奪う様に取り上げた。

「何これ。」

「あ。」

それが自分の上着だと気が付いたレオンハルトは、小さく声を出す。

「君の?」

「ええ。昨日…、」

レオンハルトは説明の途中で突然、顔面に上着を投げ付けられた。

「リュ、リュユージュ隊長?」

失態を演じた自覚があるならまだしも、傍目にも当人にもそんな事実はない。

「僕は隊長ではないと、何度言わせるんだ。」

若干感情が昂っている様子のリュユージュの態度に焦燥を覚えたレオンハルトは、慌てて彼を追い掛けて行ってしまった。



アンジェリカは溜息を吐いて左右に首を振ると、リュユージュの屋敷を後にした。

「全く何だってのよ、本っ当に感じ悪い。あいつ絶対、友達いないわね。」

彼女はそう一人言を呟きながら、宿屋へと戻って行った。

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