「ほっほ、若いの。お前さんは恐いもの知らずだな。」

それは王の悪態をついたからだろうか。

「ワシは生き残ったから思えるのかね。先王には感謝しとる。」

━━戦争を起こした者に感謝するなど、敗国民ではない証だ。

ドラクールは翁にさえ、嫌悪した。

「この国は住み良くなった。いや、此処だけじゃない。全土がだ。」






世界の情勢にも歴史にも疎いドラクールにとっては、全く興味のない昔語り。

しかし甘んじて翁の言葉に耳を傾けていた。






世界全土に賊が跋扈していた、乱世時代。

各々が小国を築いており、彼等は極めて脆弱な軍隊に依る国防力しか持ち合わせていなかった。

しかし、結束や協力などと言う概念が皆無の国々が協定を結んだところで、足の引っ張り合いになるだけなのは明らかだ。






「どの統治者も、己の保身しか考えておらんかった。」

突如として現れた、ダーヴィッド・キャンベルと名乗る灰白色の髪を持つ一人の若い男が世界全土に向けて反旗を翻したのだ。

時には武力を行使し、時には頭脳を行使し。

瞬く間に逆賊は元より、各地の統治者を支配して行った。






『世の行く末は、我の背後から覗き見よ』






自身が全ての支配者となり、従事者の未来は保障する、と。






「本当に素晴らしい御方だった。御自らが前線で指揮を取るなど、我々の主では考えられない事だったよ。」

「それでも、結局は殺し合いだろ。」

ドラクールは再び酒を口にした。

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