その後もレオンハルトは炊爨を手伝ったりと、忙しなく野営内を動き回っていた。

そして今もまた、炊き上がった白米を手に何処かへ向かう様だ。

副隊長たるもの、本来は一言の命令でそれを済ますべきだ。しかし、こればかりはもう彼の性分なのだから仕方がないとしか言い様がない。



「今度は何をするの。」

珍しく、リュユージュがくっついて来た。

「これは捕虜の分の食事です。」

ヘルムの下から、爽やかな表情を見せるレオンハルト。

「ふうん。」

そんな彼の顔を覗き込んで、リュユージュは言った。

「僕は大将の側近の一人を降伏させたけど、そう言えばそっちにも一人いたよね。」

レオンハルトの表情は、途端に凍り付く。

「ねえ、レオン。いたよね、白馬の側近。バースに行ったよね。」

居た堪れなくなった彼は戒告を覚悟して、リュユージュに向き直った。

「申し訳ございません、リュユージュ隊長!バース河港に進軍して来たバレンティナ軍は…、」

「知ってる。君の二重人格は、誰よりも僕が一番良く知ってる。」

一見すると温厚な性分に思えるレオンハルトだが、戦闘となると一変する。

その変貌ぶりには、リュユージュさえもが一線を画している程だった。



「確かに、将軍は僕を出陣させた。だけど今回はバレンティナ軍の目的も目標も、まだ明らかになっていない。なのに本当に殲滅してしまってどうする気?」

「は…。言葉もございません…。」

レオンハルトは立ち止まり、項垂れた。



リュユージュは暫く無言で彼を凝視していたが、ふと目を細めて見せる。

満足した証だ。

「うん、ちょっとすっきりした。もういい加減、説教は勘弁して。」

何とも、子供っぽい仕返しだった。

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