睨み合ったまま、ただ時間だけが過ぎ去って行った。

息遣いが聞こえそうな程に押し寄せる、不気味な静寂。

反面、自身の激しい鼓動が耳にうるさく響いていた。



先程の対峙にも匹敵しそうな程に、膠着状態は続いた。



ロザーナが、その二律背反的な空間を破る。

「白の死神よ。…いや、ルード殿。」

彼女は喉元に強く刃を押し当てられている為、言葉を発するのも少し難しそうだった。

それでも、あらん限りに声を張り上げた。

「キャンベル王国 十字軍 第二隊隊長 リュユージュ・ルード殿、及び総員に告ぐ!バレンティナ公国軍 陸軍准将 ロザーナ・レジェス、此処に敗北を宣言する!」









宣言が終わると同時に、ロザーナの拿捕とリュユージュの救出に総員が駆け付けた。

不意にリュユージュの右手から広刃剣が落ちた。一瞬、彼の意識が飛んだのだ。

「リュユージュ様!?」

「ああ…、済まない。大丈夫…。」

安定しないリュユージュの体を支えながら、第十隊隊長が報告をする。

「先頃の救助要請信号は、我が軍のものではございません。ご安心下さい。」

「救助要請信号…?そんなの…あった?」

リュユージュが上げて見せた顔からは、酷く血色が失われていた。

「え、ええ。南の方角で上がりました。バース河港より、バレンティナ軍が打ち上げたものと思われます。」

「そう…。」

彼は溜息にも似た弱々しい返事をし、どうにか命令を出した。

「早く…レオンを…。」

「ええ。今し方、部下を伝令に向かわせました。ご安心下さい。」

「止めて…レオン…を…。止め…。」

まるで譫言(ウワゴト)の様に同じ言葉を繰り返しながら、遂には目蓋を閉じた。

━━畜生…。駄目だ、意識が…。

それは全身全霊を注ぎ込んで戦闘に挑んでいたという、紛れもない証であった。

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