深夜にも拘わらず、山頂から見下ろす町は真っ赤に染まっていた。

その光景は、それぞれ違う思惑を持つ二人の目にどう映っているのだろうか。






「予想より人数が少ないな。火器に頼り過ぎてるからなのか、少数精鋭で来たのかは分からないけれども。」

リュユージュは馬から降りた。焼ける町を眺めながら、ギルバートに指示をする。

「とにかく、振り返らずに一直線に走るんだ。後ろは絶対に見るな。少しでも躊躇したならば、その時は死ぬと思え。」

「ああ。」

ギルバートは深く頷いた。

「僕は途中で馬から飛び降りる。後はただ、ひたすら走れ。」

「飛び降りるって…、隊長さんは?」

「僕は大将の馬を奪う。」

「も、もしも…、奪えなかったらどうするんだよ!?」

「気にするな。」

「気にするなって言われても、そんなの無理だろ!!」

リュユージュは馬上のギルバートを見上げたが、直ぐ目を逸らした。









二人は、自警団の男に聞いた傾斜の緩やかな道を行く。

「奇襲なら、急坂から一気に行く方が良いんじゃねえか?」

「それはそうなんだけど、僕と君を乗せて坂を下るだけで馬の前脚には酷い負担がかかるからね。こいつには、この後まだ王都までの長距離を走ってもらわないとならない。」

納得したギルバートは口を閉じた。

中腹辺りまで来るとリュユージュはギルバートの後ろに乗り、手綱を取った。

「僕が馬を降りる瞬間は、口じゃ教えられない。感じ取ってくれ。」

「分かってるって!」

そう、強く答えるギルバート。

リュユージュはその言葉に対して、僅かに戸惑った。

信頼と言う名の、どうにも慣れない感情を向けられたからだ。



「行くぞ。」

それを悟られぬ様、彼は努めて冷静に馬の腹を踵で押した。

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