「ところでその、バレンティナ公国とやらは何処にあるんだ?」

「遥か西に浮かぶ、小さな島国よ。」

リサは呆れた様に彼に問う。

「地理も苦手なの?」

ドラクールは溜息を漏らした。

「俺は学校に通った事などない。監禁生活を強いられていると、言っただろう。」

「でも、」

「それ以上聞くな。答える気はない。」

「…ゴメンなさい。」

ドラクールはリサを拒絶した。己が惨めに思えて仕方なかった。






「俺は戻る。」

その言葉にリサは不安気な表情を見せた。

「また来る。必ず。」

フードを再び被り、引き止める間もなく彼は足早に立ち去って行った。









ドラクールは戻るなりカーミラに問い掛けた。

「なあ。バレンティナとは、どんな国なんだ?」

ベッドに横臥していたもう一人の己が、口調や声音をも同じく回答する。

「西方に位置する公国だ。海国の為、外の影響を受ける事が少なく独自の文化を維持し続けている。いきなり、何故?」

彼は摩天城が建設された理由を聞いた、と、答えた。

「キャンベルの保護も支配も受けず、また協定も結んでいない、唯一の国家だ。宗教や政治、経済、主義、思想などとにかく全てが特有過ぎて孤立している。」

「独自の文化とは、例えば?」

カーミラは体を起こしてベッドの縁に腰を掛けると、語り始めた。

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