小説 | ナノ
あなたとの距離は近くて遠い。
もしかしたらあたしは好きになっちゃダメな人を好きになったのかもしれない。
あたしの好きな人、幼なじみの幸村精市。
精「名前、部活に行ってくるから待ってて」
「うん、待ってる。精市」
精「ん?」
「いってらっしゃい」
精「行ってくるよ」
フワリと優しく笑ってあたしの頭を撫でて真田くんや柳くんと一緒に部活に向かう。
「無理なのかなぁ?」
『名前、あんたはまたそんなこと言って』
「志杞、だって…」
『だってじゃない!!あんなことを見せ付けておいて無理とか言わない。幸村に愛されてる』
「そうなのかなぁ…」
だって…。
精市が授業中ずっと見ているのは窓側の席の咲良ちゃん。
優しそうに嬉しそうに笑うからその度に胸がチクチク痛むの。
あたしはいつも精市を…精市だけを見つめているのに。 精「名前、いつも待たせてごめんね」
「いいの、あたしは精市がテニスしてるの見るのすごく好きだから」
精「ありがとう」
「精市無理してない?」
精「無理?」
「いつもそばにいてくれるから、嫌ならいなくていいんだよ?」
精「俺が好きでしてるんだ」
ねぇ、精市好きなんだよ。
わかってよ。
お昼、精市の毎日の日課の花の水やりに付き添う。
ポカポカしてるからついウトウトしちゃって首がカクンとする度に目が覚める。
でもやっぱり我慢できなくて精市に声をかけてから闇へと落ちていった。
「せ…ちゃ…」
夢を見た。
今よりもずっとずっと大人になっててそばには精市が笑ってる。
今もそしてこれからもずっとこの関係が続いて行けたらいいのに。
これから先もずっと精市のそばにいて、あたしが精市を笑わせてあげられたら、一緒に笑っていられたらいいと思うのはわがままなのかなぁ。
なんだか息苦しくなって目が覚めた。
え…?
ぼーっとしていた頭が覚醒してきてだんだんと状況がわかってきた。
目の前に綺麗に整った精市の顔があって距離は0。
苦しくなってきたから精市の胸を叩く。
「ぷはぁ…ハァ…ハァ…」
精「名前おはよう」
どうしてなにも変わらないの?
「精市、どうしてあんなことしたの?」
精「あんなこと?」
しらばっくれないで。
「好きな人としかしちゃダメなんだよ」
精「名前、俺は名前が好きだよ」
優しく笑って近づいて来たからあたしはそれを避けるなんて出来ない。
彼は彼女の唇にキスをした。
(精市は…ずっと咲良ちゃんが好きなんだと思ってた) (昔から俺の好きな人は名前だよ) (ほんとに?ずっと咲良ちゃんを見てたじゃん) (勘違いだよ(拗ねてる名前が可愛いから窓に写ってた名前を見てただなんて言ってあげない)。ほら機嫌を治して) (精市好き) (知ってる。俺のほうが好き)
He kissed her on the lips.
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