小説 | ナノ



俺の彼女は先輩。


弓道部のエース的存在で可愛くて優しくて。

先輩に会ったのは丸井先輩と先輩の試合を見に行った時。

先輩に迷惑をかけて、でも優しく笑って許してくれた先輩に一目惚れした。


なぜか俺の名前を知ってて、大丈夫だなんて笑ってくれるから。

もう好きで好きでたまらなくて丸井先輩に協力してもらって告白した。


付き合って三ヶ月。

いい人過ぎるから不満がある。


誰にでもニコニコ笑う、つまりガードが緩い。

俺の先輩なのに告白がたえない。


「丸井先輩、名前先輩への告白が堪えないんですけど…」

丸「当たり前だろぃ。あんな可愛いやつ誰がほっとくかよ」


「名前先輩は俺のです…。あとラブレターとか…」


丸「名前は無視するようなやつじゃねぇよ」


「そうっすけど」

丸「まぁ名前を信じとけよ」


「丸井先輩って名前先輩と仲いいですよね」

丸「幼なじみだかんな」


「えぇ!?聞いてないっすよ」

無邪気な先輩を知ってるのは俺と丸井先輩や仁王先輩ぐらいだと思う。


学校の先輩はいつも凛としているから。

一緒に手を繋いで帰る。


先輩といたらどんなに長い道のりだって短く感じる。

あぁ、もう着いちまった。

「せーんぱい♪ちゅうしてください」


『家の前だから今度ね』

ちぇーダメかぁ。


すげーショック。

肩を落として帰っていると先輩の俺を呼び止める声が聞こえた。

『赤也!!』

振り返ると先輩の顔が近くにあって頬へのキス。


「もう名前先輩!!大好きっす」

ある時先輩の机の中にラブレターが入ってた。

俺の知名度が低いからこんなんが続くのかな?

『ちゃんと断るよ』


「当たり前っす」

先輩は笑顔で飴を渡してくる。

イチゴミルクの飴。


優しく甘い飴を先輩はいつも舐めている。

ずるい…先輩の飴攻撃が始まった。

いつも勝てないのを知っててするんだ。


「出た、名前先輩の飴攻撃」

『機嫌直ったでしょ?』

可愛くてしょーがねぇ。

「せーんぱい♪帰りましょ」

『ごめん、今手伝いしてて帰れそうにないの。だから先に帰ってて』

「俺も手伝います」


『いいよ。苗字さんの彼氏にこんなことさせられねぇ」

『赤也、ごめんね』

トボトボと教室を後にした。


<名前先輩!!だってよ>

<似合ってねぇよな>

聞こえてるっつーの。


先輩は優しすぎなんすよ…。

やる気おきねぇからコンビニ行こ。

夜道を歩いていると名前先輩がいた。

「名前先輩!!何してるんすか。10時っすよ」


『コンビニ行ってたの。赤也は?』

「俺もコンビニっすけど。名前先輩は可愛いんすから1人で暗いところ帰っちゃダメ」

『ふふ、やっぱり赤也は心配性だ』


フワフワと甘い匂いがする。

『赤也どうしたの?』

「名前先輩、今あの飴舐めてるでしょ」

『よくわかったね』

「甘い匂いがしたら名前先輩と一緒にいるんだって改めて感じるっす」


『なんかうれしいな』

「そうっすか?あ、先輩明後日試合があるんすよ」


『お弁当持って絶対行くね』

やった♪

『苗字さん、この前行ったカラオケ楽しかったね。また行こうね』

「この前って…」


『部活が休みのときに行ったの』

「俺とは行かないのに…」

『えッ!?』

「なんでもない」


我が儘が爆笑しそうだった。

あーぁ今日は一度も会ってねぇ。

<俺苗字さんに告ってきた!!断られたんだけどいつも舐めてる飴くれた>


<いいな>

なんすかそれ。


『赤也!!やっと会えた』

「先輩…俺にとって女は先輩だけっす!!先輩は違うんすか?」

…言い過ぎた。

「明日…来なくていいっす」


俺すごく矛盾してる。

試合当日にやっぱり来てほしいだなんて。

『赤也!!ちゃんと見てるから』

会いたかった人は言った瞬間倒れて保健室へと運ばれた。

苦しそうな先輩に胸が痛む。

『あか…や…?』


「馬鹿ッ!!なんで熱があるのに来てるんすか」

『だって見たかったんだもん』

悪いこと言ったのは俺なのにやっぱり優しくて、もう大好きっす。


「俺だけが名前先輩を好きみたいで。我が儘だってわかってるのに嫉妬して」

『赤也好き』



イチゴミルク。



甘い飴をいつも舐めている先輩は甘いのか?いつも思ってた。
やっぱり甘くて大好きだって実感した。

イチゴミルク