小説 | ナノ



遠い、果てしなく遠い存在なのに誰よりも近い人。

そんな人にあたしは恋をした。


仁王雅治、幼なじみでありあたしの好きな人。

[仁王くんと幼なじみなの?いいなぁ]って。

よくない、全然よくないよ。



辛いだけなんだよ?

あたしはただの幼なじみで恋愛対象になんか入ってないんだから。


まさはモテるから女の子を取っ替えひっかえしてる。


「ねぇ蓮二。またまさは違う女の子といるね」

蓮「名前…今忙しいから話し掛けないでくれ」



柳蓮二も幼なじみ。

あたしは小学4年のときに転校したんだけど転校した場所にいたのが蓮二だった。


唯一あたしの気持ちを知ってる人。

立海でまさに会ったときにはびっくりしたなぁ。


「蓮二のけち。ねぇ蓮二?みんなね、まさと幼なじみがいいって言うの。全然よくないのにねぇ?」


蓮「ふむ、その質問がお前をそんな顔にさせていたのか」


どんな顔?って聞いたら知らなくていいだって。


蓮「終わった。名前帰るぞ」


「うん」


前まで3人で帰ってたのになぁ…。

ぼーっとしてたら足を滑らせて階段から落ちた。


『名前ッ!!』


あれ…?

今まさの声が聞こえたような。


やばい、やばいって。


「きゃッ!!」


誰かにぶつかっちゃった。

蓮「名前、大丈夫か?あれほどぼーっとするなと言っていただろう」


「わゎ、ごめんね」

多分1年生だよねぇ?

「ごめんね、今何も持ってないの。今度お詫びするから、クラスと名前教えて」


『い、いえ』

「ごめんね」


はぁ…やってしまった。

蓮「悩み事などするからだ。馬鹿だな」


「馬鹿じゃないですー」

蓮「ほら、コンビニに行くのだろう?行くぞ」


「そーだよ。お菓子買うんだぁ」


買ってくれる?と笑って歩きだしたら後ろから手を捕まれた。

雅「名前ッ!!」


「まさ…?」

雅「名前大丈夫か?怪我はないんか?痛いところは…」


「大丈夫だよ、心配性だなぁ」


ぺたぺたとまさの大きな手で頭や顔や腕を触ってくる。

優しくしないで…。


引き返せなくなるから。


蓮「仁王、さっさと伝えればいいんじゃないか」

雅「黙っててくんしゃい」


まさと蓮二の話している意味がわからなくて頭にはてなを浮かべていると後ろのほうにいるまさの彼女がいらいらしてた。


「まさ、彼女さん待ってるよ。行かなきゃ」

雅「あぁ」

「じゃあね、まさ」


雅「危ないことするんじゃなか」


頭を撫でる手がどうしようもなく愛しくて切ない。

好き、大好き。

ほらまた…。


まさが優しくするから閉じ込めてきた想いが出てきそうになるじゃん。


あぁ、どうしてかなぁ。



止まらない。



まさへの想いが泉のように次から次へとこぼれてきそうになる。
蓮二、どうすればいいのかなぁ?
辛いんだよ。

止まらない