小説 | ナノ
君が大好きなんだよ。
あたしには君しか見えない。
君は本当に残酷だよね。
あたしの気持ちを知ってやっているんでしょう?
あたしは立海テニス部マネ。
イジメなんて当たり前でそれをずっと堪えてきた。
最近はみんな認めてくれたみたい。
でも、それでも…。
イジメなんかよりも辛いものがある。
それに堪えられるほどあたしは…。
強い女じゃないんだよ。
ずっと我慢してる…。
何をかって?
“気持ち”をだよ。
あたしの彼氏は幸村精市。
同じクラスで立海テニス部部長。
弦一郎や蓮二とは小さい頃からずっと一緒にいた。
これは幼なじみというものなのかな?
話を戻すけど気持ちというのは悲しいということ。
なんでかって?
精市が浮気をしているから。
この前他の女の人とキスをしてるの見ちゃった…。
頭をなにかで殴られたように頭はずきずきと痛み、目の前は真っ暗になった。
ショックで胸が苦しくて痛くて…。
蓮二は“お前には怒りの気持ちはないのか”とか“我慢をするな”とか悲しそうな顔をしてる。
「精市…大好きだよ」
精「俺もだよ…」
絶対“好き”だなんて言ってくれない。
心ここにあらず状態。
ふふ、笑っちゃうよね。
これで付き合ってるなんて言えるの?
教室で日誌を書いていたら聞こえてくる足音。
精市が向かいに座っていて携帯をいじっている。
蓮「名前、弦一郎がうるさい。仕事をしてくれないか?」
「うん。じゃあ…精市、あと任せていいかな?」
精「あぁ…」
不安になると蓮二に相談する。
「蓮二…」
蓮「泣くな。ほら涙拭け」
涙が止まらなくなって手で目をおさえる。
そんなあたしを蓮二は抱きしめて頭を優しく撫でてくれた。
蓮「ほら弦一郎がうるさい。行くぞ」
「うん、蓮二」
蓮二は珍しく本気で怒った顔をしていた。
開眼してたよ…。
ちゃんとやってくれたのかなと教室をのぞきに行くと女の人の声がした。
だんだん艶っぽい声になってくる。
いやッ!!
聞きたくない…。
自然と涙は頬を伝っていた。
走り出すけどどこに向かっているのかわからない。
すると誰かにぶつかった。
「ごめ…ん…」
蓮「名前?どうしたッ!?」
「れん…」
人目も気にせず蓮二の胸の中で大声で泣いた。
いつのまにか寝ていて気付けば自分の部屋のベットの上。
蓮「起きたか…」
親と話していただろう蓮二が部屋に入ってくる。
「ごめん蓮二」
蓮「泣くな…」
「もうね…?諦めることにしたよ。精市はあたしのこと好きじゃないから」
蓮「名前…」
「本当に大好きだった。あたし…幸せだったよ」
蓮「よく我慢した…」
優しく頭を撫でてくれるから泣きそうになった。
次の日メールで精市を屋上へと呼び出した。
「精市…別れよう」
精「どうしてだい?」
「それを君が聞くの…?」
精「…」
「大好き…だった」
涙がでそうなのを堪えてできる限りの笑顔で言う。
精市のことが大好きで…。
浮気なんて何度も見てみぬふりをした。
だって大好きだったから。
辛かった…。
苦しかった…。
胸が痛かった…。
あたしだって1人の女なんだよ。
弱いんだよッ!!
“好き”
ただたった一つの言葉が届かなかった。
届かない思い。
あたしの努力は無駄だった。 あたしの思いは伝わらなかった?
届かない思い
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