小説 | ナノ



30分もすると蓮二は着替えて出て来た。

足の遅いあたしに合わせて歩幅を小さくしてくれる。


こんなささいな優しさがすごく好き…。

家の近くになったとき蓮二に言ってみた。

「もう…」

蓮「名前?」

「我慢しなくていいよ…」


蓮「どうした」

「わかってるの。蓮二が櫻井さんを好きだってこと。ずっとそばにいたから…」

蓮「俺は…」


「だからいいよ。そばにいなくても。蓮二が好きな人と幸せになってくれたらいいから。無理しないで」

涙を我慢して蓮二に笑いかけた。

「バイバイれんくん…」

走るまではいかないけれどあたしにしたら早いペースで歩いた。


家について部屋に篭った。

急いで志杞に電話をかける。

「もしもし…志杞…?」

[もしもし、名前ッ!?]


「言ったよ。志杞…」

[名前…頑張ったね]

「うんッ…しき…」

涙が止まらなくて志杞とも話しがまともに出来ない。

[名前、家に泊まりにおいで。話し全部聞く。迎えに行くから]

「志杞ありがと」


[じゃあ待ってて]

お母さんに志杞の家に泊まることを告げて準備をした。

数分後家のチャイムが鳴る。


『じゃあ行くよ。捕まってて』

「うん」

志杞が乗ってきた自転車に荷台に乗る。

「志杞…来てくれてありがと」


『親友の頼みだし。断るわけないじゃん』

志杞の家に泊まってそのまま学校へ行った。



大好きだよ、でもバイバイ。



突き放してごめんね。
でも、蓮二には幸せだと思うんだ。