たまたまだ。本当に、偶々が重なっただけなのだ。
偶々雨が降っていて偶々了くんがいて偶々傘が一本しかなくて偶々帰り道が途中まで同じで偶々その場にバクラが居なかった。ただそれだけなのだ。私からしてみればどれも不可抗力でどうしようもない事なわけで。
「…何怒ってるのバクラ」
「怒ってねえよ」
「………」
怒ってんじゃん…久しぶりのデートだというのにこのむすくれた顔のバクラは何だっていうんだ。私何かしたか、してないよね。…え、してないよね?
好物である筈のシュークリームに口を付けず、そっぽを向いているバクラからは殺さんばかりの怒気が漂っている。怖い。何にそんなに怒っているのか教えてもらわないと私には分かんないのに。
「ねえバクラー」
「うるせえ」
「もー、何に怒ってるの?私何かした?」
「…自分で考えろ」
ああこりゃ駄目だ。『俺はお前を許さねえ』オーラで満ちてるもん。
と、ここでふと思い出す。相合傘を、だ。もしやバクラは私と了くんの相合傘を見ていたんじゃないだろうか。(なんで見ていたかなんて今は問題にすべきじゃないよね)
「相合傘」
「、」
バクラの、二本飛び出た癖っ毛らしきものがピクリと動いた。俗に言うウサミミ部分の反応を見るに図星なんだろうな。そしてそのウサミミはどうなってるんだ。
「お前、が…俺は困ってると思って傘、持ってったっていうのによ…」
「うん、」
ぽつりぽつり、バクラは話し始めた。
用事があるからと先に帰ったはいいが家に着いた途端降り出した雨。それを見て真っ先に思い出した私の顔。傘を持っていないんじゃないかと心配になったバクラはさささと用を済ませ迎えに来てくれたという…。
単語で話すバクラの言うことを要約すればこういう展開だったらしい。そして彼は自分の分身(の様な存在)と相合傘をする私を見て、ショックと寂しさとヤキモチを覚えたのだった。
「おい、ヤキモチは余計だヤキモチは」
「あれそうなの?」
だけど私には、どうにも妬いている様にしか見えないわけで。そうなると可愛く見えてくるわけで…。
色白の顔を朱に染めたバクラの頬に、口付けせずにはいられないのだった。
かわいいうさぎ
(ばっ…何すんだテメェ!)(ちゅーだよバクラくん)(っ…!)
―――――
ヤキモチ妬きなバクラくんでした(´ω`)
バクラはあんまり表に出さないだけでいつもいつも優先順位第1位は主だといいな。
100705