表情がくるくる変わるところとか、フットワークが軽いところとか、良くも悪くも子どもみたいなところとか、成宮くんに対する私の印象は初対面からずっと変わらず“親戚の年下の子”だ。いや、我が稲実のエース様にそんな印象を抱いていることが知られたらまずファンの子たちには撲殺されそうだし、私だって最初『何かに似てるな、あ、親戚の年下の子だ!』ってなったとき、自分を一発殴る必要を感じたけど。ちなみにカルロスくんは爆笑して、白河くんでさえ肩を震わせて笑ってくれた。私の発想は少しズレているらしいけれど、近くはないけど赤の他人ってほどでもない、やっぱり親戚の、それも年下の子。

「な、成宮くんには…言わないでね…」
「あー言わねー言わねー。鳴にキャーキャー言わないってことはそんなに親しくもねーんだろ?」
「そのわりには鳴のこと意外とわかってる」

お二人は、キャー成宮くんこっち向いてーと言わない私に興味を持ったらしいのだ。ぶっちゃけ鳴のことどう思ってるよ、親戚の年下の子って感じです、と素直に答えてしまって、さらに興味を持たれた。女子なんか無駄に馴れ馴れしい鳴のファンか遠巻きに鳴に恋してるかのどっちかだと思ってた、だって。そんなことないと思うんだけどな。私の友達のあっちゃんはサッカー部エースの佐藤くん派だし。
成宮くんは確かに魅力的な人だけど、でも私にとってはそれだけで、 特にそこからファン感情にも恋愛感情にも発展しなかった。よくあるやつ。『○○さんっていい人だけどねー』『○○くんかっこいいんだけどねー』とか。それだ。

「それにしても、親戚の小さい子って、ははは!最高!」
「…っ、くふっ」
「ほんとに言わないでね!?私なんかが成宮くんに対してそんなこと考えるだけでおこがましいんだからーーー」
「そんなことってどんなこと?」
「ギャアアア!!」

嘘だろこんな漫画みたいなタイミングでご本人登場とか。アッそうか成宮くんは漫画に出てくるキャラなのか。だからあんなにハイスペックなんだきっとそう。ああでもそのスペックをこんなところで発揮しなくていいんだエース!

「いやっあのなんでもないデス!ほんとに!聞いたとしても成宮くん不快になると思うので!あの!イイデス!!」
「ぶはは必死すぎ。イイかどうか決めるの俺じゃん」
「ひー、お前なんだってこんなタイミングで来んだよ!余計笑い止まんねーだろ!」
「ぶっ、くくっ…」
「あーーーもう!馬鹿!!」
「だっ、て、あぁ、ダメだ、苦し…」
「白河くん息して!弁解するために息してください!!」

白河くんの肩を掴んでガクガク揺さぶる。白河くんは身を縮こまらせてるせいで硬くて、非力な私ではたいして揺れなくて、二人ともいい加減笑うのをやめてくれないとほんとに私殺されかねない。女子高生というブランドを使い捨てないままに死ぬなんて!そんなブランド特に活用もしてないけど!

「ふーん、あとでカルロと白河からちゃんと聞き出そ。とりあえず俺らミーティングするから」
「アッハイスミマセン失礼しました!!」

ああ、な、なんていうか、親戚の年下の子というよりは、生意気な隣の家の子みたいだ。格上げしたんだか下げたんだか。
とにかくあの笑いの渦(プラスハイスペックエース)から抜け出した私は、あっちゃんに「お疲れ」と肩を叩かれたのだった。
あの二人たぶん、ていうか絶対成宮くんに言うんだろうな。やめてって言ったのに。
成宮くんからのアクションが怖い。これからはもっと控えめに生きようと心に決めた。

よくよく考えたら生意気な隣の家の子って、全然控えめじゃない。



「親戚の年下の子ォ?なにそれ」
「ぶっふ」
「ハイそこ白河!笑わない!」
「いいとこついてくるよなアイツ。旭だっけ?」
「えー、親戚の子かー」
「?なんだよ、満更でもなさげだけど不服、みてーな顔して」
「俺あいつの彼氏、っていうかゆくゆくは旦那ポジション狙ってんのに」
「………は?」
「まぁいいや。これからだよ。エースは積極的に強気でいってナンボだよね」
「えっ」
「あ、旭とか軽々しく呼ばないでくれる?春駒だって、春駒」
「……お、おお…」



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