夕日に照らされる教室に、私が一人。誰もいない教室は遠くの部活の声が聞こえるだけだ。
全体を見渡す。いつもの賑やかな空間が嘘みたいだ。
ふぅ、と息をはいた。



思えば何とはない学校生活であった。可もなく不可もなく、そんな無難な。でも、君と出会えたことは、少しだけ可だったかな。


彼の机の前に立つ。ここでいつも彼は勉学に励み、居眠りをし、私と笑い合い……、ここで毎日を過ごしていた。そんな日も、今日でおしまい。……いや、正確には私との毎日が終わり。



「楽しかったな。」



心の底からそう思う。カラフルな彼らとのカラフルな毎日。そして、こんなしょうもない私と一緒に笑い合い、喧嘩してくれた黄色い彼。本当に楽しかった。まぁ、喧嘩とかの類は少しだけ苦しかったけれども。

明日から私はこの空間にはいない。そう改めて考えると、少しだけ泣けてきた。いかんいかん、ここで泣いちゃだめだ。
そう思い直すと、今もなお私の心の中で渦巻く、赤い彼からの言葉が再生された。





「本当に、いいのか。」





それは、本当に行ってしまうのかということでもあり、本当に彼に言わなくていいのか、ということでもあるのか。まぁ、両方か。



「ご、め、ん、ね。」



彼の机を指でなぞる。届いて、とも届かないで、とも思わない。

私がいなくなるのを彼に最後まで言わないのは、泣き顔を見たくないからという私の勝手なエゴだ。明るい彼の笑顔のまま去りたい。そのあとにどれだけ彼が傷つくか、週を明けた月曜日に、彼はどんな顔をするのか。考えたくない私は薄情者だろうか。



「は、や、く……、」



忘れてね、となぞろうとして、私の目から雫が落ちる。
ああ、薄情者だなぁ。その上、酷く自分勝手。

彼の机の上に落ちた雫を拭う。そうして、昨日書いた一つの手紙を机に入れ、私は教室から小走りで逃げた。















この時まで、ちゃんと愛してた。

それでも、






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -