幸せは、どうしてこうも一瞬なのだろう。ずっと続いて欲しいことはすぐに終わりが来て、来て欲しくない終わりは、悲しみなどのマイナス感情をもたらす。そんなもの、誰も得なんてしないのに。





「何をしてる…」
「……っ」
「何をしてると聞いてんだ!!!」





私は、幸せだったなぁ。兵長の傍で働けて、兵長の傍で世界を見て、そして…





「……死にたいんです…」
「……は、」





“今までお世話になりました”
そう書き置きをして私は調査兵団から逃げ出した。それを知ればきっと上司であるリヴァイ兵長が動くだろうというのはわかっていた。それでも私は、逃げ出したかった。

案の定追いつかれて隠してたナイフを取り出す。たかがナイフだけじゃリヴァイ兵長に完全に勝ち目なんかないけど、最初から死ぬつもりなら何で戦おうとどうでもよかった。

あわよくば兵長が殺してくれないかな、なんて考える私は一人では死ねない臆病者だ。





「わがままだって…わかってます。ただのエゴだってことも、こんなことして兵長に、無駄な労力を使わせてしまうことも。でも、」
「ふざけてんじゃ…ねぇぞ…!!!」





ナイフを突きつけて、それでも兵長は絶対に向かってこなかったからこちらから行って、そしてかわしたと思ったら兵長はブレードを投げ捨てて私を腕の中に閉じ込めた。





「離して下さい!!」
「馬鹿なことをしてんじゃねぇ!」
「……私…!もう生きていたくないんです…!!」
「…!!」





きっと兵長は優しいから、こんな私のことも一緒に背負ってくれるのでしょう?こんな、生きることをやめてしまった私のことも。わかっているから、余計に辛い。





「グンタがいなくなって、エルドがいなくなって、ペトラが、オルオが、みんながいなくなって、…いつもみんなが居た場所に誰もいなくて、だから…!!」





仲間を失うのがこんなにも辛いものだったなんて思わなかった。今まで死んでしまった同期よりも一緒にいたからかもしれない。
目の前で死んでいった仲間たち。思い出すだけで辛くて辛くて死にたくなった。




「……じゃあお前の仲間はもう残ってねぇってのか」
「!」
「ハンジは?エルヴィンは?エレンは?…俺は?」
「……ぁ」
「俺はお前の仲間じゃねぇのか?」





そうだ。苦しいのは、私だけじゃなかった。エレンだってあのとき私と一緒に居たし、兵長だって自分の部下が一気に全員死んだんだ。私だけじゃ、ない。なのに私は死んでしまったみんなしか見えていなかった。今まだ隣に居てくれている人を、私は見ていなかった。





「………仲間、です…っ」
「そうか。じゃあ、まだ仲間がいるってのにてめぇはまだ死にたいなんて言うのか?」
「………」
「……ハァ」





ため息をひとつ吐いて、兵長は私を離す。もう逃げようなんて思わない。でも、生きていたらまた思い出して辛くなってしまう。それが怖い。辛い思いをしたくない。それを察したのか、兵長が私の目を見つめて言った。





「辛くなったら俺のところに来い。」
「……でも、」
「うるせぇ。これ以上死にてぇって言うんだったら、」





これからはてめぇの心臓は、俺に捧げろ。






そう言って、兵長は拳を握って私の胸に押し当てた。




















「兵長」
「なんだ?」
「ありがとうございます」
「それは何の礼だ?」
「命を拾ってくれて」
「手間のかかるガキだったな」
「はは、否定しません」
「もう、あんなクソなこと言わねぇよな」
「ええ、これからは私1人じゃありませんから」
「………そうだな」
「この子のために、生きなきゃいけないので」
「でもてめぇの心臓は俺に捧げてんだろ?」
「……ええ。心臓はずっとリヴァイさんに……」



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -