部屋を可愛く飾り付けして、お昼頃からコトコトビーフシチューを煮込んで、ケーキだって手作りにして…そしてみんなを呼んでクリスマスパーティー!
そんなクリスマスを予定していた。そうなるはずだった。





「……ひどい」





クリスマスに1人なんて、あんまりだ。みんなみんな家族と過ごすって。中学生だから仕方ないって思うけど…
私の家は両親二人とも共働きで、クリスマスも例外なく夜遅くに帰ってくるから1人だ。
わがままだってわかっている。私の都合でみんなを無理矢理呼ぶ訳にはいかないから、そっか、って笑っておいた。ちゃんと笑えてたよね。





「今頃みんな家族と楽しく過ごす準備をしてるだろうな…」





赤司くんが今日の部活すら休みにするんだ、私は普段はいない休日の昼間に暇を持て余している。あ、涙出る。
ちょっとだけ泣いた後、くよくよしてもしょうがないからビーフシチューでも作ろうと立ち上がった時、携帯電話がピロピロと鳴った。メールだ。





「…緑間くん?」





以前無理矢理アドレス交換をした緑の彼からのメールだ。珍しい、というより彼から送られてくるなんて初めてだ。異常事態にドキドキしながら開くと、彼らしい質素なメールが表示された。





【学校の校門へ来い】





「学校の校門?」





彼は学校にいるのだろうか?
ハテナマークが飛び交う中、パジャマからスカートとニットに着替え、寒いだろうからニット帽も被って外に出た。



◇◇



外は晴天だ。だからこそ冷たい風が体の横を通り過ぎて行く。学校の校門前に着いたが、彼はいなかった。あれ、呼び出しておいて遅刻?でも緑間くんに限ってそんなこと…とキョロキョロと辺りを見回すと、校門の壁の上に何か紙切れがぶら下がっている。なんだこれ。手にとって見てみると、





【結衣さん、3丁目の本屋さんに向かってください】





という文字と、綺麗に包装された箱が置いてあった。開けてみると、女の子らしい時計だ。かわいい。それにしても名指しか。





「次は本屋さん?」





その時計を腕につけ、本屋さんに向かった。なんだろう、ワクワクした。



◇◇



本屋さんでは欲しかった文庫本と【結衣ちん、駄菓子屋さんでお菓子もらってきてー】
その次に指定された駄菓子屋さんではお菓子の詰め合わせと【ショッピングモールにGOッスよ!】【もう少しだからがんばってー!】
ショッピングモールでは綺麗なネックレスとイヤリングと【俺たちがいつも使うコンビニだ】
コンビニに行けば私がいつも読んでいるファッション雑誌と【2丁目の花屋だよ】

なんだか今日ですごく街をグルグルしている。でもやめようなんて思わないのは、誰の仕業かわかっているから。みんな、素直じゃないんだから。人のこと言えないか。

最後のお花屋さんに行くと、3本のバラの花束とかわいい指輪、そして【学校の体育館に】と書かれたカード。また学校に戻る。これで全員分だ、次は何があるのだろう。

1人だと思っていたクリスマスは、いつの間にか1人じゃなくなっていた。



◇◇



立て付けのいい学校の体育館の扉をギギギ、と開ける。中はしんとしていていて、誰もいなかった。あれ、いつもバスケ部が使ってるこの体育館だと思ったんだけどなぁ。
数歩中に入ったとき、どこからかパンパン!と破裂音。そして笑顔のみんなが出てきた。





「「メリークリスマス!!」」
「!」





そうして始まったキセキのクリスマスパーティーは、テンションが上がった黄瀬くんと青峰くんが緑間くんが持ってきてくれたケーキをぐちゃぐちゃにしちゃって、緑間くんと紫原くんを怒らせて、赤司くんが2人に練習メニューを追加していて、それを私と桃井ちゃんと黒子くんが仕方ないなぁって笑っていた。
今年のクリスマスはとても楽しいものになった。



そうそう、クリスマスプレゼントは、みんながそれぞれ私宛に選んでくれたみたい。私は幸せ者だなぁ。





あ、赤司くんから“3本のバラ”の意味を知ってる?って言われたんだけど、あれってなんだったんだろう?




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