それが私たちの信じたものだった。
ボールの跳ねる音。バッシュのスキール音。たくさんの声援。そして、広がっていく点差。
白と水色のユニフォームを着た6人が創り出していくこの世界を、私たちは信じていた。
「結衣っち!俺がんばったッスよ!」
かっこよかったッスか?と笑顔で会場の外で待っていた私に声をかける黄色い彼。それを筆頭に試合を終えたみんなが私に歩み寄ってきた。
「でもお前、ノルマギリギリだったじゃねぇか。結衣、俺はどうだった?」
「青峰っち!俺が先ッスよ!」
「黄瀬ちんうるさーい。」
「もう少し静かにするのだよ」
「ひ、酷いッス…!」
いつでも賑やかだなぁと思いつつ、私はいつも通りの言葉を紡ぐ。
「今日も、みんなかっこよかったよ」
思ったままそう言うと、みんな満足したように笑ってくれる。
私はこの時間が好きだった。
「結衣。」
ふと先頭を歩いていた赤い髪の彼に呼ばれ、最後尾から先頭に小走りで向かう。すると彼は少しだけ笑って頭を撫でてくれた。
「いつも応援をありがとう。」
「いえいえ!どういたしまして!」
少しだけ笑い合ったあと、ふと後ろを振り返ると俯き気味な水色の彼が見えた。
「黒子くん、どうしたの?」
「………」
「黒子くん?」
「結衣、今テツヤに話しかけない方がいい。」
「え?」
どうして?と聞いたが、誰も答えようとせず、また次の試合の話になっていた。
なんだろう、この感じ。
心配じゃないのかな、と思っていたとき。
「こんなの…おかしいです……」
疑問を浮かべる私の隣で、彼はそう呟いた。
おかしい、ってなんだろう。
それが私たちの信じたものだった。
ボールの跳ねる音。バッシュのスキール音。たくさんの声援。そして、広がっていく点差。
白と水色のユニフォームを着た6人が創り出していくこの世界を、私たちは……私は信じていた。
どこからだろう、なにがちがったんだろう。
なにがおかしかったんだろう。
それから、彼は部活を辞め、持ち前の技で姿を消した。
そして、みんなはそれぞれ強豪校に進学していった。
私は、あの日の彼の言葉が未だに忘れられずにいた。
なにが、おかしかったんだろう。
でもなぜだろう、もう今更なのに……
違和感が消えない。