それでも、日常はやってくる。
私は仕事で翌日には出社していた。

蛯原さんと顔を合わせるのが辛くて、始業ぎりぎりに到着した。
私に相葉が声をかけてくる、

「おぅ!真貴・ぁ・・」

でも様子が変だ。
なんか顔が赤い。

「お早う」と返事をする。

「あっ、おはよぅ」

でも相葉の挙動不審は酷い。
声なんて尻すぼみだし。
首を傾げると、髪がさらりと流れる。
それを耳にかけながら「どうしたの?」と言えば相葉は「っなんでもない俺の勘違い」とか言ってくる。
ますます分からなかった。

けど、今一番聞きたくない声がした。

「本宮、おはよう」

凛と通る声。
私の心を掴む人。
視線を奥のデスクへ投げる。

やっぱり其処には今日も完璧な姿の蛯原さんがこちらに視線を投げていた。

「おはようございます」

変に意識したくなんて無い。
それなのにこれだけで意識してる自分が、馬鹿みたい。

私は挨拶を済ませると、直ぐに自分のデスクへ戻って仕事を始めるのだった。


そんな私をジッと見詰める蛯原さんの視線に気付きながら、気付かないフリをしていた・・・


◆SIDE相葉◆
なんか本宮の雰囲気が週明けで一気に変わった。
色香というのか、少し憂いを帯びた悩ましげな空気を纏ってる。
こんな艶やかな本宮を俺は知らない。

だから一目見た瞬間に、もう俺はゾクリッとした、欲が湧いた。
組み敷いて、キスして掻き抱きたくなった。

こんな風な女の人の雰囲気を俺はこれまでの経験で知ってる。
本宮は男に抱かれたんだ。
誰って言えば、それは分かりきったことで。

きっと日曜は旦那が放さなかったんだろう。
ギリギリと臓腑が焼かれるような感覚がする。

俺は諦めたんじゃないのかよ。
諦めて友達で良いって思ったんじゃないのかよ。
それなのに8年間ずっと好きな本宮がこんな風に他の男に染められるっていうのは・・・しんどい。

今日は、最悪だった。

しかも蛯原さんも目に見えて・・・可笑しくなった。
きっと気付いてるんだ、蛯原さんも、本宮の変化に。

けどそんなの俺が何か言えることじゃなくて、俺は仕事に向かうしかなかった。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -