対決のその後
繋がりが絶たれる感触だけが柳田の内側をかき乱した。
金剛水によって削られた陣が発動する。
光が溢れ、風が吹きあがる。
秀一に根ざした妖の存在が封じられてゆくのが分かった。
自分の唯一を奪われる感覚に柳田が名を呼んでも返事はない。
花開院陰陽師が印を切る。
その光に包まれる秀一の背を見詰めることしか出来ず、秀一の力で抑えていた、この場所の崩壊が進む、地下が、壁が、崩れてゆく中で。
まろぶように駆けて。
柳田は『妖』を封じられて『人』となった秀一を後ろから掻き抱いていた。
その後はどうしたのか…どうやって崩れゆく場所から抜け出したのか。
あるいは秀一が最後の力を振り絞って『処渡りの術』を行ったのかもしれない。
柳田は秀一を抱きしめたまま地上に出ていた。
側には憎い花開院陰陽師が倒れている。
つい、止めをさそうかと思うが腕の中の秀一が呻き声をあげたからハッとして意識をそちらに向けると。
彼はけぶるような睫毛を瞬かせて瞳を開けた。
そして幾分、ぼうっとして顔をしていたが自分を覗き込んでいる柳田を見ると仕方ないとばかりに微笑む。
「どうやら…今の俺は妖ではないようだぞ。」
わかっている。
そんなことは抱きしめている体の体温からもわかる。
わかってしまう。
けれど離したくなどなくて、離れたくなどなくて柳田は目の前の秀一を抱きしめることしか出来ない。
「秀一…君はボクのものだ」
「…今は違う」
「いやだっそんなことは認めないっ」
ぎゅうぎゅうっと抱きしめる柳田をあやすように抱きしめ、そして秀一は苦笑すると口をひらく。
「なら柳田、お前がオレのものになれ。」
その言葉に呆ける様に柳田が秀一を見詰める。
するといっそ晴れ晴れとしたような笑顔で彼は言った。
「お前は俺の式となって俺の側にいろ。」
その言葉が二人の新しい関係の始まりとなった。