対決

百物語組で山ン本五郎左衛門が復活後。
オリジナル展開となります。
ご注意ください。


魔王となった山ン本様が討たれたのを柳田は呆然と見ていた。
けれど柳田は黒田坊に血の涙を流しながら、狂気をこめて言い放ったのだ。

「山ン本様は地獄で進化なされていたのだよ!」

百物語の“続き”は自分が紡ぐ。
そうだ、まだ“彼”がいるのだから。
そして柳田は闇へと消えたー…

そして…遠く柳田との屋敷で、ただ庭を眺めていた秀一は自分の『語り部』に呼ばれたのを感じ、フッと嗤う。
その彼の足元からは影が広がり、飲み込み…やがてそこには誰も残ってはいなかったのである。

*****

崩れゆく建物の中、竜二は待っていた。
その時が来るのを、ただただ待っていた。

そして…

「やはりお前もいたのか竜二。」

顔を上げれば、あの時のまま変わらぬ姿で竜二の兄は佇んでいた。
隣りには、あの妖もいる。
リンと鈴が鳴る。

「俺を殺す決心がついたか?」

懐かしい声に呼ばれて、胸が切なくなるほどに苦しい。
けれど終わらせなければいけないのだ。

すべてを…

「妖のアンタを滅する。」

そして竜二は懐から出した札で挨拶とばかりに攻撃をした。
バチバチとそれは兄の元に着く前に弾かれ、地へ落ちる。

「秀一」
「大丈夫だ」

二人の妖は短い言葉を合図にして、秀一は前へ、柳田は後方へと下がった。
生ぬるい風が吹く、ガラガラと崩れゆく建物のなかで、
秀一は少し気がかりそうに上を見ると、足元の影を広げた。
途端に建物の崩壊が止まる、この場を秀一が影を使って押しとどめているのは明らかだった。

竜二には予想外ではあるがそれも嬉しい誤算だった。
その隙に金剛水を用いて、見えぬように網を張っていく。ゆるりと進む水は決して気取られてはならない。
あとは時間との勝負だ。

「竜二、お前の力をオレに見せてみろ」

そして影は竜二に襲いかかった。

*****

力の差は圧倒的だった。
元々兄は陰陽師として最強であったうえに、こちらの戦い方は読まれている。
幾重にも向かってくる影を水で防ぎ、身代わりをたて、最後は結界を札でたてて防いだが防戦一方を強いられて竜二のあちこちは傷が出来て、足にもガタが出来始めていた。

まだかー…あと少し。

兄は竜二をいたぶりながらも、どこか眉を寄せていた。

「秀一」

背後で兄を妖として繋ぎとめる男の声がする。

「竜二、もう終わりにしよう」

それに応えるように兄は言った。

だが…賭けはオレの勝ちだった。

「いや、あんたも一緒だ」

瞬間、金剛水によって削られた陣が発動する。
光が溢れ、風が吹きあがる、

「つぅっコレはっ!!」
「アンタの魂にこびり付いた『神』を封じる陣だよ…」

竜二はそこで笑った。

「これで終わりだ。」

そして竜二は印を切る。
光に包まれながら…目の前の兄は、どことなく笑っているようだった。
秀一の力で抑えていた崩壊が進む、崩れてゆく中で。
ここで兄と共に死ぬのも良いと思った。


それを最後にして竜二の記憶は途切れる…







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