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そこからは簡単だった。
元々、覇気で白ヒゲのクルーの位置は把握していたから、マルコはあっさりと人質を解放し、元々強いクルー達はマルコのフォローも入り、次々とゴロツキを伸してしまった。
「マルコ隊長っ!」
だが嬉しそうに駆け寄る仲間の手は拷問の怪我で汚れている。
マルコは仲間の爪が剥がされている事に気付いて、眉を寄せ、その手を取る。
「あっすみませ、ポカやって」
・・・申し訳なさそうに謝罪する仲間。
、違う・・・痛いだろうに・・・マルコは緩く首を振った。
「遅くなって悪かったよい」
皆を守るべき隊長なのだ自分は。
それに自分の怪我は治せるのに、なぜ俺は人の怪我を治すことが出来ないのだろう・・・
と後ろでククッと笑う下卑た声がした。
「白ヒゲ海賊団なんて、ついてねぇなぁ」
あのゴロツキの頭だった奴だ。
床に倒れながらも、こちらをジッと見ていた。
「しかも不死鳥のマルコときたもんだ」
だが彼はその唇から笑みを消さない。
それにジワリッとマルコの胸に不安の波が立つ。
なんだ、この焦燥感は。
長年の経験からヤバイと分かる。
「出し抜いてやるぜ?不死鳥マルコ。」
何故こいつはこんなに余裕を崩さないのか?
マルコはそいつの側まで歩み寄ると、思いっきり胸倉を掴んで引きずり上げていた。
「全部、吐けよい」
真剣なマルコの蒼の瞳を見て、
男はニヤッと笑う。
「あぁ・・・もう間にあわねぇだろうしなぁ」
男の口が残酷に動いた。
「俺たちの所から逃げ出した、お前んとこの奴を追いかけた手下が居る。
そいつに命じた・・・
逃げた奴と、その仲間が居たら・・・
毒を盛って殺せとな。」
マルコはその蒼の瞳を見開いた。
なんだと?
すぐに浮かぶのはエースとクルーのこと・・・
二人は一緒にホテルに待機している筈だ。
ホテルには他の隊長もいるから・・・けれど。
毒?
エースも白ヒゲのクルーも強い、そんなことは分かっている・・・でも、こいつ等は。
「騙して毒を盛って、動けなくなったところを嬲り殺せってな」
殺すだとっ!!!
ザワリッとマルコの中で殺気が膨れ上がった。
エースを殺す?
エースを?
マルコ!!
思い出すのは、あの満開の笑顔・・・
明るく呼ばれる自分の名。
大切な、いとしい家族。
マルコはそのまま力任せに、そいつをぶん殴った。
「グハアァッ!!!」
壊れた人形のように吹っ飛び、ドオオォォンッ!!と大音量を出して壁にぶつかってゆく男を放置して、マルコは直ぐに不死鳥に変幻した。
「マルコ隊長っ!」
その場のクルー達が幾分か慌てている。
「お前達はモビーに戻って手当て受けて来いよいっ!!」
とだけ言うと、その場を飛び立った。
エースに手を出させはしない!!
俺は、もうお前を喪いたく無いよい・・・エース。
間に合ってくれ!!
不死鳥が夜の空を飛び立つ・・・
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