結局、君が好きだった
「俺、マルコのこと好きだ。」

とエースに言われた時は、驚いた。
けれど俺にはエースに返せる想いはなかった。

「有り難うよい…」

嬉しいとは思う、信頼し、家族として愛してるエースから特別に想われるというのはこそばゆく嬉しい。

けれど…

「俺はお前をそんな風には見れないよい…」

と言えばエースは切なく微笑んだ。

「わかってる」

深く悟ったかのような声でエースはそう言った。


わかっていたけど言わずにはおれなかった。
心から愛していたから。

そんなことはマルコに云わないけれど。

この時の俺はマルコの側にいられれば良いと思った。
想いを伝えながら穏やかに、マルコの側に、ただ側に居られれば良かった。

ゆっくりと時間が過ぎてゆく、一日、一週間と過ぎてゆくなかで、やっぱり俺はマルコが好きで、でもマルコは俺を弟としか思っておらず。

不意に触れる指先や、笑う声に泣きたくなるぐらい切なくなる。

その一瞬に期待している自分が哀しい…

だから全部に終わりをつけようと思った。
俺の想いに全部…そんな折り合いをつけるのに数か月かかった。
マルコを甲板に呼び出して、他愛もない話をしてて、話が途切れた瞬間に俺は必死に言葉を絞り出した。

「俺、マルコのこと諦めるよ」

元から付き合いたいなんて大それたことを想ってた訳じゃなかった、ただ側にいたかった。

でもそれすら止めようと想った。
マルコの側にいるには辛すぎる、俺はマルコのことが好きすぎるのだ。

少し驚いたかのようなマルコの瞳、綺麗な蒼の海の色。

そりゃそうだ数ヶ月前にふった弟が、まだ自分を想ってたのかと知れば驚きもする。

マルコのその瞳を真っ直ぐに見返して俺は微笑んだ。

「今まで、俺に付き合わせて悪かった」


あぁこれで終わり。
そして俺はマルコの返事も聞かずに背を向けたのだった。

最初は歩いていて、もしかして声がかかるのではないかと馬鹿なことを想う。

船の船尾へ続く、曲がり角まで来ると、離れたくないと心が叫んで泣きたくなる。

俺が曲がって互いに姿は見えなくなってもマルコは追いかけてくれない。

そして、どうやって帰ったのか自室まで戻ると力が抜けて俺はへたり込んでいた。

涙があふれる…

ふっ、うわあああぁっ

てらいなく子供のように泣く自分が滑稽だった。


そして馬鹿な俺は、君を好きだと気付いた。

「俺、マルコのこと諦めるよ」

そう言われた瞬間に理解した。
エースが俺から離れようとしていることに。

この数ヶ月、エースから想いを告げられてから、当たり前のように惜しみない好意を受けた。

一緒に食事をする、俺に飛びきりの笑顔を見せて笑うエース。
エースに好意を持つ者も多い中で選ばれたのは自分というのも嬉しかった。

二人で酒を酌み交わす時間も好ましい。
そう恋愛とかを抜きにすると俺たちは相性が良かった。

楽しくて、気づかない振りをしていた。
俺を焦がれるように見詰めるエースの視線に。


そして今、離れようとしている…エースに。

俺は声がでないほど、自分が酷く衝撃を受けているのに気付いていた。

エースを放したくなくて。
エースの俺への想いを無くしたくないと想ってしまった。

ただこれは恋じゃない。ただ離れるエースに寂しさを感じているだけだ。
そうでなければ、ならない。



そして運命は残酷にぐるりと廻って。
マリンフォードへと繋がってゆく。

END

<後書>
最初はマルコ←←エースな感じなのに、
途中でエースが諦めて、
マルコから離れようとすると、
マルコはそれを許さない。

エースのこと大事で可愛いくて堪らない。
愛してる。
くせに頭で考えすぎて身動きできなくなるマルコ。

気付いた時にはエースとの間に
何かしらの隙間が出来てる感じが。
(ライバルであったり)
美味しくいただけます(^P^





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