名前を呼んで。
人を呼ぶって酷く単純な発声行為だ。
けれどそれは、そいつを認識してるってことだと思う。
名前で呼ぶってことは、特別な意味を持っていて、やっぱり親しみを込めてあるものが大半だ。
親しみを込めて、呼ぶ。
相手を。
認識する。
けれどアイツは俺を、そんな風に呼ばない。
そんな、あったかい言葉知らない。
アイツは俺を、揶揄と憎悪と嫌悪をスパイスにして呼ぶのだ、
「シズちゃん」
アイツの声が俺の心を抉るように名を呼ぶ。
「シズちゃん」
今度は耳元で囁かれた。
後ろから臨也を受け入れて貫かれたままの格好で、俺ははくはくと口を開け空気を求めた。
奴はニヤリッと耳に唇を寄せたまま残酷に笑う。
「シズちゃんの後ろ、きゅぅって締まった、笑えるね」
玲瓏な声で囁き続けられる。
「ほら、また」
いい所に当たりそうで当たらない、もう動いて欲しくて切羽詰っている。
でも臨也の声に、あさましく体は震えた。
臨也の手が俺のペニスに伸びてグチュリッと水音を響かせ、軽くすかれると頭が快楽に溶ける。
「あっああっ」
動きに合わせて声が出てしまう、その時だった。
「静雄」
甘くアイツの声が、俺を犯して。
カリッと耳を噛まれたまま、強く鈴口に爪を立てられる。
「ふあああっっやあっぁっいざやぁっ」
「イッちゃいな、いやらしく出してごらん」
射精を手伝うように臨也が俺のペニスをすき続ける。
俺は臨也にバックで犯されながら、耳も犯され、呆気なく精を吐き出した。
呼ばれた名前が酷く、切ない。
END
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