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『残酷な君の笑顔』
「別れよう」
吐気がする自分が言った言葉に。
俺の言葉にジャンはその蜂蜜色の瞳を見開いた。
「ジャン、悪いな、もう一緒に居られない」
俺はジャンに言うというより、自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
けど直ぐにジャンは綺麗に笑った。
「あーそっか、良いんじゃないのケ、俺達、付き合ってないし」
あっさり紡がれた言葉に胸に痛みが走る。
俺は付き合ってるつもりだったし、手放す気なんて無かった。
けど分かったCR:5のカポであるジャンカルロを俺が女のように抱いているのは間違いだ。
好きで、惚れてて・・・堪らない最高の男。
俺が全部教えた、最高級の服、靴・・・シノギも、酒の味も・・・男の味も。
俺のカポ。
磨き上げた最高の男。
流れるような蜂蜜色の髪とジャンの顔を見るだけで心臓が騒ぐ俺はどうかしてる。
そして・・・ジャンは「じゃ」と言って、俺に背を向けて去りかけた。
もう二度と恋人にはなれない・・・けど胸が痛くて、気持ちが溢れて嫌だと叫びそうになる。
そんな弱い自分が・・・ジャンに思わず声をかけていた。
「最後に一回、お前を抱いて良いか?」
愛しくて離れがたくて、お前を抱き締めたくて堪らなかった。
男なら別れる相手に抱く、当たり前の感情・・・だが、この欲はジャンを軽く扱ってるから・・・
今の今まで言うつもりなんてこれぽっちも無かったのに。
でも俺は、この時・・・自分の願望を消せなかった・・・俺はお前に俺を刻みたかった。
ゆっくりと振り返る・・・一瞬のような永遠のような・・・振り返ったジャンの顔は、笑っていた。
「ワオ、ワオ、良いんじゃないかしら」
軽く言われて、俺は知らず手を握り締めていた。
ジャンにとっては俺はその程度だったのかと・・・手の平が焼け付くようだった。