現在遠距離恋愛中で一般的な恋人とは違い頻繁に会うのは難しい距離に住んでいる私達。
寂しいと電話した翌週、偶々シフト休みが重なっている日があったので久しぶりに会ってデートしようとなった。
デートする前日にお互い仕事終わりに駅で待ち合わせしてそのまま一人暮らしする彼の家にお泊りしようという話になり、退社後すぐ駅に直行出来るように大きめのバッグにお泊まりグッズを突め込んで仕事用鞄と一緒に肩にかけて持ってきた。
服は着替える時間がなかったのでスーツのままだ、致し方ない。
電車に揺られて数時間、慌ててメイクを直したが崩れていないか手鏡でサッと確認する。
彼の最寄駅である改札口をくぐれば直ぐに彼を見つけて「久しぶり、だな」と少し照れた顔ではにかんでくれた。久しぶりに会う所為か緊張と嬉しさを噛みしめながら私も久しぶりと声を掛けるがお互い少しぎこちない。
けれどそれもほんの一瞬で「荷物、これだけか?」と言って私の肩にかけてある鞄を持ってくれようとする亮くんに「自分で持つから大丈夫だよ」と断るも「いいから貸せって。彼氏の俺が持たねーで激ダサだろ」なんて男前なこと言ってくれるから申し訳ないと思いつつも彼の優しさに甘えることにする。
今度は「寒かっただろ、ほら」なんて手を差し出してくれるから亮くんのゴツゴツとした大きな手に自身の手を重ねると元々低体温なので私の手の冷たさに思いもよらなかったのか「手冷てっ!」と驚きの声を上げられるもぎゅっと力強く握り返してくれて亮くんの手の温もりに包まれる。
「亮くんの手あったかい」
「そうか?なまえの手が冷たすぎるだけだろ。早く俺ん家行ってあったかい鍋でも食おうぜ。材料はもう昨日の内に買ってある」
街灯に照らされる夜道の中、亮くんの家を目指しながら手を繋いで歩く2つの影がゆらゆらと揺れる。
駅から20分くらい歩いた所で亮くんの住むマンションに到着した。エントランスをくぐり、エレベーターに乗り込んで亮くんの部屋があるらしい5階まで上がる。部屋の前に到着し鍵と扉を開けて奥のリビングに通してくれた。
「あ、片付いてる」
「お前が来るってなると流石にな」
「あはは、じゃあいつもならもっと散らかってるんだ」
「朝とか時間ねぇから脱いだ服とかその辺に置きっぱなし。男の部屋なんてそんなモンだろ」
それからは一緒に鍋作ったりテレビを見て寛いだりで大好きな彼氏と過ごす時間はあっという間に過ぎていった。
寝る準備を整えた頃には夜も更け、本来なら1人用の狭い布団に2人くっついて入り、カーテンの隙間から漏れる月明かりに照らされた部屋で亮くんの腕に頭を預け今日会ってからの1日を振り返ってみる。
料理の時なんかは最初亮くんが鍋に入れる野菜を切ってくれていたがどうやら細かい作業は苦手の様で「あーくそっやっぱ細けー事は苦手だ!悪りぃが変わりに切ってくれ!」って包丁渡された光景に思い出し笑いする。
すると急に笑みを浮かべた私に亮くんは不思議に思ったのか「何笑ってんだよ」と怪訝な顔された。
「ほら、鍋に入れる野菜切る時に細かい作業は苦手だから切ってくれって言って私に包丁渡したじゃない。亮くん案外不器用なんだなぁって新たな発見というか可愛いなって思ってつい思い出し笑い」
「…性格的に細かい事が苦手なだけだっての。笑うな」
激ダサだぜ。ガシガシと髪を掻いてそういつもの口癖を漏らした亮くんの顔を見れば恥ずかしそうにほっぺを赤らめる姿が視界に入った。また可愛いなんて言ったら怒るだろうけど照れる姿に母性本能がくすぐられ思わずきゅんとする。
「ごめんごめん。でもいつもご飯はどうしてたの?」
「あー…。カップラーメンとかコンビニ弁当とかばっかだな」
「それじゃ栄養偏って身体によくないよ」
「だよなぁ…」
するとじっと天井を見つめる亮くんにこてんと首を傾げる。
「どうしたの?急にぼぅっとして」
「いや…一緒に住んだらこんな感じなのかと思ってよ」
亮くんの言葉に私も亮くんの見つめる天井にぼんやり視線をやりながら今日色違いの歯ブラシが用意されてたのを見て、同棲したらお揃いの物が増えてくのかなぁと嬉しくなったのを思い出す。
いつか同棲したいねとお互い何度か話したことがある。
頭を預けていた亮くんの腕が肩に回されきゅっと力が籠るのが分かった。
「いつになるか分かんねぇけどさ、その、同棲したらなまえが料理担当な」
「ふふっ了解。今から料理の腕上げとかないとなぁ」
「んな事しなくても十分上手いだろ」
「んー…下手だって思われたくないもん。練習したりレパートリー増やしとかないと」
「ふぅん、なら期待してる。けど無理はしないでくれよな。…実現出来る様に今から2人で貯金して計画してこうぜ」
遠いようで近いのかもしれない未来に想いを馳せた。

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あおいさんから、誕生日プレゼントに頂きました!ありがとうございました〜!!


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