カチカチと時計の針が刻々と進んでいき、0に近づいている。
もうすぐで記念日が終わってしまう。
わたしはさっきからスマホを握りしめていて、LINE開いては今朝送ったメッセージに未だ既読が付かず早く既読が付かないか、彼からメッセージが届いていないか一日中そわそわ落ち着かない状態でいた。仕事中、休憩中、晩御飯食べている時、お風呂入っている時だってずっとスマホが気になって仕方なかった。
彼はここ最近仕事が忙しいって言ってた。だからきっとLINE見る暇もなくて未だ既読が付かない状態なんだろう。
0時が回り、記念日が終わってしまった…。
照れ屋で中々言葉には出さない人だから、その上仕事忙しいって言ってたしメッセージ来ないのは仕方ないって分かってるけど。それでも無性に寂しくなって目頭が熱くなる。
とうとう抑えきれなくなってぽたっと涙が零れた。泣きたくないのに次から次へと涙が溢れてくる。服の袖で目元をぐいっと拭った。
負の感情になってしまうこんな自分が嫌だ。亮くんは仕事忙しいんだから仕方ないじゃないと自身に言い聞かせる。
だけどやっぱり寂しくてもう一度亮くんとのトーク一覧を開いてみた。相変わらず既読はついてないまま。
疲れて寝てるかもしれないけど…記念日だったし亮くんの声が聞きたい。
意を決して通話ボタンを押しスマホを耳に押し当て何回かコール音鳴った後「もしもし」と声が聞こえてきた。


「もっもしもし。ごめん、寝てた?」
「いや、起きてた。さっきまで風呂入って今部屋戻ってきた所。こんな時間にどうした?」
「あ、うん。急にごめんね、電話掛けて。ちょっと亮くんの声が聞きたくなって…」
「そう、か。悪りぃ、最近連絡出来てなくて」
「ううん。仕事忙しいって言ってたし大変なんだから仕方ないよ」


亮くんに重い女だって思われたくなくて自分を抑え込む。


「…ひなこに我慢ばっかさせちまってるよな。本当悪いな、気付いてやれなくて」
「ううん!わたしの方こそわがまま言ってごめんね」
「謝るなって。わがままだって思ってねーし、何て言うか、その…逆に我慢しねぇでもっと言って欲しいっつうか。俺鈍いから気付いてやれねぇ事の方が多いしひなこに我慢ばっかさせたまま付き合っていくのは違うと思うからよ」


嗚呼、亮くんはわたしの事こんなにも想ってくれてて素敵な彼氏なのにどんどん欲張りになっちゃう。


「亮くん、好きだよ」
「なっ、何だよ改まって?」


好きだと伝えると彼の慌てふためく声が聞こえてきた。


「ううん、ちょっと伝えたくなったから言ってみただけ」


それじゃあおやすみなさい、そう言って通話ボタンを切ろうとした所を亮くんの慌てて止める声が聞こえてきたので切るのを止めた。


「ちょっと待て!今日って何日だ?」


何日なのか聞かれたわたしは日付けを伝えると記念日だった事を思い出してくれたのか今度は焦った声で謝罪の言葉が聞こえてきた。記念日だった事やっぱり忘れられていたんだとショックを隠せない。


「悪りぃ!すっかり頭になかったっつーか!…って、言い訳にしか聞こえねーよな。仕事の所為にして悪いんだけどよ、ここ最近忙しくて忘れてた。本っ当激ダサだよな…ごめん…」


あ…。次の言葉が中々出てこなかったけど何とか絞り出し声を掛けた。


「謝らないで。忙しいのは本当なんだし」
「…俺が悪いんだけどよ、何かひなこに気遣わせたり謝ったりしてばかりだよな。俺さ、言葉で伝えるの苦手だしひなこに不安な思いや嫌な思いばっかさせちまってると思うけどこれからはもう少し言葉でちゃんと伝えるようにする。その、好きって気持ちは変わんねぇから。こんな俺の彼女になってくれてありがとうな」


普段は照れ臭くて中々言葉では伝えてくれない彼がこうやって一生懸命口に出して伝えてくれている。もうそれだけで十分じゃない。これ以上欲張るとバチが当たって神様から叱られそうだ。
電話の向こうではきっとガシガシ頭を掻きながら顔真っ赤にする彼の姿があるんだろうなと頭に思い浮かべる。


「そんでよ、埋め合わせって訳じゃねぇけど今度の休みに桜見に行かねーか?目黒川辺りとか、今丁度見頃で綺麗に咲いてるって言うからよ」
「行きたい!」


亮くんと久しぶりのデート。
お気に入りのワンピース着て化粧もいつもより綺麗に施してうんとお洒落頑張った。お弁当もサンドイッチ作ってと気合い入りすぎたかもしれない。
目黒川の川沿いに咲く桜を見上げながら亮くんと恋人繋ぎしてゆっくりと並んで歩いた。
ゆっくりと時間が流れていくようで、大好きな人と見る桜は普段よりも綺麗に見え、そしてぽかぽかと暖かい日差しを受けながら春だなあと目を細め穏やかな気持ちになるのと同時に幸せを感じる。


「亮くん、来年も見に来ようね」
「嗚呼、来年も一緒に見に行こうぜ」


永遠なんて不確かな言葉だけど、来年もその先もずっと亮くんと一緒にいれたらいいなと願った。

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大好きな相互サイト様である未来少女の蒼依さんから頂きました。蒼依さん、ありがとうございました!!!


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