クリスマス / 仁王
(大学生設定です)
(テニラビ雪仁王SSRのifです)
「お疲れ様でしたー!」
そう言ってドアをあけると、外は既に真っ暗になっていた。
本日、クリスマス・イヴ。バイトをしているケーキ屋さんは、今日は一日中ずっと忙しかった。開店と同時に止むことの無いお客さんへの対応に追われ、いつの間にか閉店の時間に。外がこんなにも暗くなっていると気づいたのは、最後のお客さんをお見送りした時だったのだから驚きだ。
「寒いなぁ」
そう呟いた私の口から白い息がもれる。
とてもとても疲れた。でも、家に帰っても誰もいない。小さい頃は家族とパーティしたりもしたけれど、今は一人暮らしだし。雅治も、今日はこの辺の居酒屋でテニスサークルのクリスマスパーティだし。
このバイトをしている以上仕方がないし、一緒に過ごせないのは申し訳無いからと、パーティに行くのを渋る雅治の背中を押したのも私だ。
……でも、帰り道にあるそれはそれは綺麗なイルミネーションが見えてくると、話は別になる。
「……」
駅に向かうにはここを通るしか無い。しかし昨日もだったけど、綺麗なイルミネーションには、カップルが集うものだ。世の中、そういうものなのだ。
…いいもん。私だって本当は、仁王雅治っていうめっちゃくちゃかっこよくて優しくて超超超素敵な彼氏がいるんだから!それに、カップルだからって何が特別だっていうのよう!一人でもケーキもチキンも美味しいし!イルミネーションだって綺麗だし!ふーんだ!
「……はぁ」
思わずため息が出る。
…だって、そうやって脳内で暴れる私が、どんなにそんなことを思っても。
「雅治に、会いたいなぁ」
やっぱりこう、思ってしまう。クリスマスだからとか、一人で寂しいとか、疲れたからとか。そう言うのを抜きにしたって、結局は会いたくなるのだ。だって私、雅治が大好きなんだもん。
とうとうやって来てしまったイルミネーションゾーン。キラキラ光る木々や柵、噴水もいつもよりとても綺麗。それを見に来たカップルも、心無しか昨日よりも増えている気がする。
「…え?」
そして最後の階段が見えて来た時、このカップル達の中で一人、立っている人を見つけた。
遠くから見たって目立つような真っ白で長いコートを着て、階段の手すりに寄りかかっている。……いや、そんな訳が無い。だって今日は、パーティに行ったはずだ。ナイナイ、アリエナイ。
そう思いながらも、その人から目が離せない。ドキドキ高鳴っていく胸を抑えながら私は足を進める。
「……」
「お疲れさん」
私を見て腰を上げた雅治は、そう言って優しく微笑む。
「な、なんで…?」
え、これは、幻覚?クリスマスの三連休で疲れすぎてついに幻覚が…?そう思って慌てて周りを見渡してしまう。
だって、パーティに行ってるはずの雅治が、こんなかっこよすぎる格好で?……いやいやこれはむしろ幻覚だと思った方が全てしっくりくるよね?
「昨日、なおこが閉店まで仕事じゃって言うとったから待っとった」
「や、え、な……本当に雅治?ホンモノ?幻じゃなくて?」
ドキドキ。聞こえてきたのはちゃんと、雅治の声だった。会いたすぎてついに声まで聞こえるようになったのか、私。
「くく。……ほら、手貸しんしゃい」
動揺を隠しきれない私の顔を見て笑った雅治がそう言って手を伸ばしてきて、私はその手を掴…。
「つめた!えっ、つめった!」
あまりの冷たさに、慌てて両手で雅治の手を握る。だって、雅治の手が、まるで氷のように冷たかったから。
「ほーら、ホンモノじゃ。幻は触れんじゃろ?」
「や、いやいや!今はそこじゃないし!嘘でしょ、こんななるまでここにいたの!?」
「んー、30分くらいかのう」
「来るって言ってくれればちゃんと連絡したのに!」
「それじゃサプライズにならん」
「そんなの!だってこんな寒っ……んもうー!」
私はぎゅうっと雅治の手を握る。雅治の手にどんどん吸い込まれていくように、私の手が冷たくなっていく。
しかし、突如その中からするりと抜け出た雅治の右手が、私の頭をぐっと抱き寄せて。
「ってことで、雅治サンタからの冷え切ったサプライズプレゼントは、お持ち帰りってことでいいかのう?」
そう言って今度は左手を恋人繋ぎにした雅治は、返事を聞く前に私の手を引いて階段を登り始める。
「えっ、でも雅治クリスマスパーティの途中じゃ!」
「やることやってきたし、もうええじゃろ」
「や、やること?」
「ん」
階段を登りきって横に並んで笑う雅治の後ろに、キラキラと眩しいイルミネーションが見える。でも、さっきよりももっともっと綺麗に見えるようになった気がするんだから、雅治はすごいなあ。
これもう、雪仁王SSR見た時からずーーーっと考えてました。やっと書けて嬉しい!衣装はクリスマスパーティの出し物で使ったとか、やることはその出し物をやってきたとかそんな感じにして下さい。(笑)
ちなみにイメージソングは『I believe/EXILE』です。とてもいい歌なので是非聴きながら読んで欲しい…!(1227)