虹 / エクスタピアス
バァン!!部室内に突如鳴り響いたドアが叩きつけられる音に、私達は一斉に目を向ける。そこにはキラキラと目を輝かせた学生服姿の謙也が、いた。
「なあ!ごっつでかい虹出とるで!」
「おー、謙也の言う通りや。めっちゃでかいやん」
ぱらぱらと降っては止んでを繰り返していた今日の雨。そのお陰なのか、謙也に言われて外へ出ると大きな虹が出ていた。
「わあ!ほんと!すごい大きいねー!」
「いやー、さっき部室向かおうと外出たら周り騒いどってな、なんやなんやと思て見たらこの虹やろ?はよ教えてやらな消えてまうと思て走ってきたわ!」
「あはは、ありがとう」
…まあ、謙也は毎日走ってきてるけどね。
「ほんま、こんな大きいのはさすがに俺も無いわ」
「せやろ?せやろ?」
「いきなりすんごい音したから何かと思ったけど、謙也が焦るのわかったよ」
「せやろー!」
「ウンウン、謙也ありがとうね」
「おおきに」
にっこにこと嬉しそうにする謙也は、私と白石を見て「ええねんええねん」と満足そうに頷いた。
……ガチャ。
「おー、ほんまや虹や」
携帯を取りに行っていたのか、少し遅れて部室から出てきたのは光だった。パシャリ。そして出てくるなり、いきなり写真を撮って。
「財前!お前疑っとったんか!」
「そういう訳や無いっすけど…でも、思ったよりも凄いっすね」
「……えっ、待ってこれ褒めとる?」
「まあ褒めとると思うで、財前にしては」
「うん」
「そ、そうか…まあならええか」
パシャリ。謙也がしぶしぶ納得した横で、光がもう一枚。
「……うーん」
「お、財前が唸り声上げるなんて珍しいな」
「ねー」
「いや、こう…虹の下に入るテニスコートがちょっと」
そう言って携帯を見て、再び唸る光。
「あ、わかった」
「ん?」
「お?」
「……え?」
「先輩ら、虹の下に並んでなんかポーズとってくださいよ。それやったらテニスコートに目行かんやろし」
「……」「……」「……」
「あー、その辺りでええっすわー」
少しずつテニスコートに向かって3人で歩いていき、カメラマンの光の合図で振り返る。
「じゃあ行きますよー、はい」
「んんーっ」
「俺が浪速のっ」
「勝者は」パチィン!
「チー」
「エクスタシー!」
「スピードスターや!」バビュン!
「俺だ!」
パシャリ。
「…あーはい、お疲れっしたー」
「はーい!見せて見せてー!」
ポーズを止めて、私は光の元へ駆け寄る。謙也はバビュン!とお決まりの音を立てて何処かへ行ってしまい、白石が後ろから歩いてくる音が聞こえる。
「こんな感じすわ」
「…ちょっと謙也残像じゃん!ウケるー!白石も見て見て!」
「ああ、ほんまや。相変わらず忍者みたいやな」
「金髪の忍者って闇に紛れる気無さすぎません?」
「……ち、ちょお待てえ!さっきなおこなんて言ったんや!」
先程砂煙を上げて走っていった謙也が、再び砂煙を上げて戻ってきた。……ん?私のポーズ?
「え?普通に、勝者は」
パチィン!
「俺だ!……だけど?」
「いやいやおっかしいやろ!なんで跡部やねん!」
そして来て早々、ツッコむ謙也。
「あ、なおこのは跡部クンやっとったんか」
「うん。だって私みんなみたいに決め台詞無いし」
「それでなんで跡部やねん!」
「えー、跡部くんかっこよくない?」
「…まあウチにはおらんタイプやなあ」
「そうそう!洗練されて綺麗な感じだよね」
他校のイケメンを探すのも、マネジの醍醐味である。
「……それやったら俺、侑士やったのに」
「ああ、忍足侑士くん?」
「そうそう、羆落し!ってな」
「それじゃ顔見えないじゃん」
「…ハッ!アカンアカン!それじゃア」
「別に元々忍足さん見えてへんすよ」
「……」
「あっはは!言えてる言えてる!」
「でもせっかくやしもっかい撮りますか、氷帝版で」
「いいねいいね撮ろう撮ろう!」
「えっ、待って俺どっち向いたらええ?前?後ろ?」
「えええ、うーん…」
一生懸命羆落しをやる謙也を見るけど、でもこれ前見てカメラ目線てのも変な話だし。……あ、そうだ!困った時の部長、白石!白石にも意見を!そう思って白石の方を見た私は、困った顔の白石と目が合った。
「なあ、俺は誰やればええんや?」
「……」
「……」
「……」
その後、ブログにアップされた写真の一枚目には『アホな先輩達』、二枚目には『勝者は俺だ』という名前が付けられていた。……虹関係ないじゃん!?
虹のお話第一弾です。単純に私が虹を見てとても感動したので、お話が書きたくて。二枚目は結局みんなで指パッチンしました。(笑)第三弾まである予定です!(1031)