誕生日 / 丸井



大好きなブン太の誕生日。クラッカーを鳴らして始まった二人だけのブン太の誕生日パーティは、いちごが沢山乗ったケーキを一緒に食べて(まあ私は三分の一も食べてないけれど)、ブン太に事前に聞いていたプレゼントを渡して喜んで貰えて。ブン太も私もハッピー×ハッピーだ。

「なあ」。ソファに座ってブン太が観たいと言っていた映画のDVDを見ていると、ブン太から声が掛かった。振り向くとそこには私を見つめるブン太が。


「どうしたの?」
「俺、なおこからもう一個欲しいモノあんだけど」


そう言って手を伸ばしてきたブン太は、私の髪を優しく撫でる。


「欲しいモノ?」


私が聞き返せばブン太はすぐに頷いて。しかし、今言われてすぐに用意出来そうなモノなのだろうか。プレゼントはもう渡したし、それ以外に欲しいモノが思いつかない。仕方がないので、何が欲しいの?と私は聞くことにした。


「なおこからのキス」
「……とは?」
「いつも俺からしてんじゃん。だから、偶には」


そう言って今度は指先で私の唇をなぞる。優しく唇に触れる指先はまるでブン太にキスをされているみたいで、でも、これはキスじゃなくて。ニヤリと口角を上げるブン太に、なんだかゾクゾクした。

「む、無理!」
「…なんでだよ」
「だって恥ずかしいもん」
「……んなモン知らねーし」

はあ、とため息をつくブン太。しかし、そんなことを言われても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。うぬぬとブン太を見つめて悩んでいると、ブン太はもう一度ため息をついた。

「そんなに恥ずかしいの?」
「ウン」
「もっとすげえこといつもやってんのに?」
「……ウン」


そんなことを今言うのは、ずるいと思います。


「まあそこまで言うならし仕方ねえな。今俺はすげー幸せだから、三つの選択肢から選ばせてやる」
「えー!さすが!ブン太優しい!」
「だろい?」


ぱちぱちと拍手をすると、満更でも無さそうに笑ったブン太は人差し指を上げた。


「それじゃあ」
「うん!」
「@イエス、Aはい、Bキスをする。この三つな」
「……は?」

「三つも選択肢用意してやったんだから感謝しろよ?」。そう言ってブン太は、これでもかと楽しそうに私の頭を撫でる。

「いやいや!それ結局ちゅーするしかないじゃん!」
「あ?そう?」
「そ、そう?って!」

白々しく首を捻る素振りをするブン太。しかし口元がゆるゆるなので全くもって意味が無い。「まあじゃあいいじゃん、ほら」。そう、目を閉じてキスを促すアピールをしてくるブン太。


「……」


どきんどきん。胸が煩い。所詮唇を当てるだけだとわかっているのに、どうしてこんなに緊張するのだろう。それも相手は今まで幾度となくキスをしてきたブン太なのに。どうして。
そうは思っていても、ブン太はきっと私がキスをするまで終わらせる気は無いだろう。そういう男だと、さすがに私もわかっている。


「目、瞑っててね」


声を掛けると「ん」と小さく返事が返ってきた。ゆっくりと近づいて、ついに、唇が重なった。

その瞬間、後頭部が抑えられて、ブン太の舌が口の中に入ってくる。驚いて目を開けると、私を見るブン太と目が合った。それだけで高鳴る鼓動。恥ずかしくて私はすぐに目を瞑った。…でも、ブン太はどうなんだろう。蕩けそうなキスの中で少しだけ目を開けると、再びブン太と目が合って。慌てて閉じるとようやく唇を離されて、一言。


「やっぱ待ってんのは性に合わねえわ」



途中出てくる選択肢の台詞をブン太くんに言わせたくて言わせたくて、ついに二つ目のハピバ夢を書いてしまいました。(笑)同じ日に勢いで書いたこともあり短編で上げたのと少し似たような内容ですが、これはこれでお気に入りです。ブン太くん!誕生日おめでとう!(0423)

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