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私には亮がしてくれることで大好きなことが3つある。
ひとつめは頭を撫でてくれること。大きい手から亮の優しさが伝わってきて、思い出してもにやにやしちゃう。ふたつめは抱きしめてくれること。亮の匂いに包まれて安心する。みっつめはちゅーしてくれること。亮のちゅーには愛がいっぱい詰まってる。滅多に好きって言ってくれない亮からも、いっぱい好きって伝わってくるんだ。





「ひなこー帰っぞー」
「はーい!」

私はカバンを持って急いで教室を出る。今日は亮の部活が休みだから久しぶりに一緒に帰ることになっていた。

「部活休み久しぶりだね」
「そうだなー」
「…やっぱりテニスしたいの?」
「そりゃな」
「……」

亮は本当にテニス少年っていうかなんていうか…。

「でもたまには休みもいいでしょ?」
「んーまあなー」
「…よくなさそう」
「あ?」
「せっかく一緒なんだから楽しんでよー!」
「楽しんでるって」
「嘘だ!……ふん!」
「え」

私は口を尖らせてそっぽを向いた。だって亮ってば絶対テニスがしたくてしょうがないんだもん。私よりもテニスだもん。別にテニスに勝とうなんてそんな大それたことは思いませんよ。でも久しぶりに帰れるんだからもうちょっと楽しそうにしてもいいと思う!

「怒ってんのか?」
「うん!そう!」
「……」
「……」
「ははっ」
「え!」

わ、笑ってる…!怒ってるって言ってるのに笑ってる…!

「お前、怒ってるかって聞いてそうって答えるやつがいるかよ?」
「そこ?」
「くはっ、悪い。いやでも、楽しくねえわけじゃないからな」
「けど顔がさー!」
「じゃあずっとにやにやしてればいいか?」
「……イヤソノママガイイデス」
「おい」

言われてずっとにやにやしている亮を想像してみた。うわ、気持ち悪い。ってか亮の顔でにやにやって何?

「にやにやはよくないね!」
「気持ち悪いよな」
「うん」
「…ま、にやにやはできねえけど、充分楽しんでるからな」

亮は笑ってそう言うと、私の頭をポンと撫でた。髪がくしゃっとなるのを感じたけど、そんなことはどうでもいいと思えるくらい嬉しい!

「……」
「え、どうしたの?」

私の顔を見て可笑しそうに笑い始めた亮。何?何かついてる?

「にやにやしてる」
「は?」
「だから顔、にやにやしてるって」
「…ええ!」
「ま、ひなこの顔ならにやにやしてんの似合ってるぜ」
「何ですかそれ!」

ははは恥ずかしい!あそこまでダイレクトに気持ちが顔に出るなんて…!

「…ちょっと待って。それって遠回しに気持ち悪いって言ってます…?」
「何でだよ?」
「だってさっきにやにやしてたら気持ち悪いって言ってたじゃん!」
「あー…いや、それとこれとは話が違」

亮がそう言いかけたときだった。後ろからいきなりクラクションが聞こえて、私の腕は亮の方へ強く引っ張られた。よろけるあたし。亮はあたしを抱き止めると、そのまま車が通り過ぎるのを待った。

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「…あ、悪い。ちょっと強く引っ張りすぎた」
「ん、んーん!」

私はドキドキするのがばれないように答える。今日はなんてラッキーなんだろう!家にいるわけでもないのに、頭を撫でてくれたしさりげなく抱きしめてもらっちゃったし。きっと今日は幸せな夢を見れるに違いない。ウン。
でも、亮が体を離すと一緒に匂いも無くなって少し寂しかった。





「あ!公園寄っていきたい!」
「おう」

あたしの手を引くと、公園に入っていく亮。

「ブランコ乗りたいなあ」
「…乗ればいいだろ」
「亮も乗ろ?」

今度はあたしが亮の手を引っ張る。亮は先に座るあたしを見て、隣のブランコに座ってくれた。

「うわ、何年かぶりに乗ったわ」
「そうなの?あたしこの前も乗ったよ」
「…お前も暇だな」
「暇って何よー」
「暇って暇だろ?」
「……そりゃそうだけどさっ」

ブランコを揺らすとキィと音がした。亮が懐かしいと呟いた。あー、風が気持ちいいなあ。さりげなく亮の方を見てみると、こっちを向く亮と目が合った。

「な、何?」
「いや、何でもねえ」
「そっか…なんか目合ったからびっくりしちゃった」
「んー…」

生返事だなあ、もう。私はいっぱいドキドキしてるのに。目を反らした亮をしばらく見つめてから、私も目を反らした。
突然、亮が立ち上がった。

「帰ろ」
「え?あ、うん」

いつもと言い方が違ってちょっと戸惑ったけど、私も慌てて立ち上がり亮に近寄って手を握る。

「…あれ、行か」

動き出さない亮を見上げた瞬間、目の前が亮でいっぱいになった。…え、私今亮とちゅーしてる?そんなことを考えているうちに亮は離れていく。

「どっ」
「わ、るい」
「悪いってか、なんていうか」

話している最中にまた思い出して顔が赤くなる。どうしたんだろう、いきなり。

「あーっとだなー…」
「?」
「キスしていいか」
「…う、うん」

亮が体をこっちに向けて改めてちゅーしてくれた。さっきとは違って一瞬じゃなくて、でもくっつけるだけで。私がびっくりしたこと気にしてくれた?ただくっつけてるだけなのに、ぎゅうって胸が苦しくなるよ。
今度は離すときにリップ音なんか立てちゃって、私の顔はさらに赤くなった。

「恥ずかし…」
「わわわ私もだよっ」

私はそう言いながら亮の顔を盗み見してみた。本当はこんな真っ赤な顔なんて見せたくないけど、でも亮の顔が気になる。私ばっかりが赤いの?

「…わ、赤!」
「ばっ見んな!」

亮の手が私の目を覆って何も見えなくなった。でも、亮の真っ赤な顔が頭から離れない。
お前も赤いじゃねーかって言われちゃっても気にしない!やっぱり亮だーい好き!


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