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(昔書いていたお話で『プリガムレッドがポケモン』の設定です。仁王がキモリ、丸井がミズゴロウ、切原がアチャモになります。ポケモンとお話出来るヒロイン、3匹はヒロインの手持ち、ほのぼの逆ハーのような感じです。苦手な人はお気をつけ下さい!)
(詳しい設定、出会い等は »こちら« をお読み下さい)




世間はもう冬になって随分経つ。基本的に温暖な気候のミシロタウンも、やはり少し寒くなってきた。


「アカヤー、おいでー」


廊下から居間に入った私は、一匹でテレビを眺めていたアカヤを呼んだ。「はい!」と元気に返事をして駆け寄ってきたアカヤは、見事なジャンプをして私の胸に飛び込んできた。


「あったかーい…」


まあるいアカヤの頭にほっぺをぐりぐりすると、ほのおタイプならではの暖かさが伝わってくる。暖房知らずとまではいかないけれど、本当に暖かくて、寒いところから帰ってきたらどうしてもアカヤを抱っこしてしまう。


「へへ!」
「どうしたの、くすぐったかった?」
「いや、俺、ほのおタイプで良かったなーと思って!」


真ん丸の目を細めて、アカヤは笑う。


「うーん、いきなりどうして?」
「……だーって、ひなこさんがいつも抱きしめて」


「おーい!クッキー焼けたぜい!」
「あ、はーい!やったねアカヤ、クッキーだって!」
「……」

ブンタの声が聞こえてきて、私はアカヤを抱っこしたままキッチンに向かう。……あ、テレビ消そうかな。どうせすぐ帰ってこないし。アカヤに聞くと消してもいいとのことだったから、戻ってテレビを消してから再びキッチンへと足を向けた。……っても、ドアを挟んですぐ向こうなんだけれど。


「わー、いい匂いー!」


ドアをあけると、キッチンは甘い香りに包まれていた。テーブルの上には出来たてほやほやのクッキーと、クッキーへとそれは至近距離に顔を寄せるブンタが。そしてマサハルもその横に立って、ブン太を眺めていた。


「あ」「……」


私達が入ってきて、2匹共こちらへ顔を向ける。しかし、嬉しそうだったブンタの顔が一瞬にして変わった。


「……あっ」


わ、忘れてた!ハッとして私は慌ててアカヤをテーブルの上に降ろす。「美味そう!」、ぱたぱたとアカヤが走って行く後ろ姿を見ながら、今まで暖かかった腕や胸が少し寒くなるのを感じた。
再びブン太を見ると、ブン太はツンと口を尖らせてしまっていた。


「…ブンタ、おいで?」


冬になってアカヤを抱きしめることが増えると、みずタイプであるブンタはヤキモチをやいてしまうようになった。最初はずっと我慢していたみたいだったけど、先日ついに「アカヤばっかりずりーよ」と言われてしまった。……まあ、正直言うとそれはそれでとても可愛い。しかしながら私は3匹みんながとても大好きだし、アカヤだけ、というのはやはりマスターとしてダメだから。


「……」


何も言わずに、てくてくと歩いてくるブンタ。テーブルのギリギリまでくると、私は手を伸ばして抱き上げた。


「ブンタさんは甘えん坊っすね」
「おめーに言われたくねえから」
「ほんまやのう」
「なっ!」
「はいはいあんまり騒ぐとクッキー割れちゃうからねー」


以前アカヤとブンタが騒いだお陰でクッキーが割れてしまうという事件が起きたことがあった。あの時のお母さんには悪かったとは思うけど、失敗から学ぶとはまさにこのことだ。何故ならそれ以来、そのことを話すとクッキーの前では大人しくなるようになってくれた。
仲が良くて何でも素直に言えるからこそ、喧嘩をしちゃう時もある3匹。そんなところも可愛いんだけれど。


「……あれ、お母さんは?」
「アッチの方に言ったぜよ」
「あ、化粧しに行ったのね」


お母さんが友達と会う日は、お土産にクッキーやケーキを焼いていく時がある。ポケモンを連れている人も多いから、ポケモン用にアレンジされたお菓子も一緒に作ったりして。今日もまさにその日で、私達はそのおこぼれを頂こうということなのだ。


「食べてもいいっすか?」
「うん、食べよう食べよう!」


私の声に、アカヤは元気良く返事をしてクッキーを嘴で軽くつつく。アカヤは羽も嘴も短いから、食べやすいように小さめのクッキーを少し砕いて食べる。
マサハルも一緒に手を伸ばして、半分に割ってクッキーを口へと運ぶ。ポケモン用のクッキーは、甘さが控えめにしているらしい。甘過ぎないのがいい、と前にマサハルが言っていた。


「……ブンタ?」


いつもなら、誰よりも早くクッキーにすっ飛んで行って食べているはずのブンタ。しかし今日は私の膝の上から動かない。

「もしかしてお腹痛いの?」
「全然痛くねえ」
「じゃあどうしたの?」
「……別に」


そう言うと、自分の頭を私の胸に擦り付けてくるブンタ。…あ、そういうことか。


「全くもー、ブンタは甘えん坊なんだからー!」


ぎゅううと抱きしめて、ブンタのほっぺに頬ずりをする。顔を離すと、私を見ていたブンタの方から再び頬ずりしてくれた。そしてぺろり、と私のほっぺをひとなめり。


「アカヤほどじゃねーよ!」


そう言って私の膝からぴょんと跳ねてテーブルに上がると、ブンタはクッキーへとまっしぐら。アカヤとマサハルの間に入って早速クッキーを食べ始める。


「なんで俺なんすか!」
「事実だろい。つーかアカヤ食いすぎ、あと残り全部俺んだからアカヤは食うなよ!」
「……ハァ!?」


結局、わーぎゃーと騒ぎ始めてしまった2匹。しかし今回はさすがにアカヤが可哀想だから、ブンタを宥めてあげる。
そうして、2匹が仲良く食べ始めたところで。


「マサハルー」


1匹だけ何の被害も受けずにクッキーを食べているマサハルを呼ぶ。ん?とマサハルはこっちを向いた。


「抱っこする?」


私の言葉に、キョトンと目を丸くするマサハル。それでも私がおいでと促すと、ぱんぱんと手についた食べかすを落としてからこちらへ歩いてきた。
私はマサハルを抱っこすると、膝の上に座らせる。そのまま頭を撫でると、マサハルは私の方を見上げてきた。


「どうしたん、いきなり」
「ううん。…クッキー、まだ食べたかった?」
「……」


私を見上げていた顔を戻すと、マサハルは頭を撫でていた私の手を自分のお腹へと巻き付ける。左手も掴んで、同じようにお腹へ。それに満足したのか、マサハルは何も言わないながらも一度頷いて。


「満足?」
「ん」
「……ぎゅーってしていい?」
「……ん」


先の2匹と同様、マサハルも抱き締めてあげる。すると私を見上げるマサハルの手が伸びてきて、私の顔を捕まえた。そのまま顔が近づいて来たかと思うと、自分の鼻と私の鼻をツンと合わせたマサハルは、満足そうに笑った。


「マサハルさんもじゃないすかー!」
「なんだかんだアイツが一番甘えたがりだよな」
「甘えたがりじゃなか、ひなこを一番好きなだけ」

「……ハァ!?」「……ああ?」

「私からしたら、みーんな甘えん坊ですー」


少し寒い午前の、楽しくて美味しい時間でした。


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