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(宍戸ハッピーバースデー!2017の一年後で、大学生設定です)


ピンポーン。


「はーいっ」


きたっ、きたきたきたぁ!夜の10時を過ぎてから鳴った呼び鈴に、待っていましたと言わんばかりに部屋を出て玄関へと向かう私。

いつものように、手を伸ばして鍵を開ける。ガチャと引かれたドアの向こうには、亮が立っていた。

「悪い、遅くなった」
「うーうん、全然だよ!」




「ご飯、何食べてきたの?」

部屋に通して、テニスバッグやら上着やらを置く亮に声をかける。
今日は、岳人くんと慈郎くんの3人でご飯を食べに行くって言っていた亮。当日は私と過ごすだろうからって、前日にお祝いしてくれたみたい。

「お好み焼きともんじゃ焼き」
「わ、いーねえ。どうしてまた?」
「岳人がこの間友達と行ったらそこの店美味かったらしくて、それで」
「なるほど……美味しかった?」
「おお、美味かった。今度行くか?」
「うん!行きたい!」

「でも鉄板系だからな、もうちょい寒くなってからにするか」。物を置き終えて手を洗いに行った亮の声は、少し遠くから聞こえて。

「……あ!亮!」
「ん?」
「せっかくだしさ、そのままお風呂入っちゃってー?」


水の音が止むと、亮はドアからひょこっと顔を出した。


「……ひなこ入った?」
「ううん、亮から今行くって連絡があってから沸かしておいたから、まだ入ってないよ」


普段は、亮が来るのがわかっていても先に入って待ってるんだけど。でも今日は…ってか、明日はせっかくの日だからね!

「…ひなこまだ入ってねーんだろ?」
「あ、でも今日は亮が先に入って!」
「いやいや、それは悪いからひなこ先に入れよ」
「いーのいーの!亮テニスで疲れてるし、それに明日誕生日だし!」

…大学生になっても、亮がテニスを大好きな所はちっとも変わっていない。今日も元気にテニスをしてきたであろう亮は、誕生日である明日ももちろんテニスをするのだ。

そりゃあもちろん、夜は一緒にいれるけど。でも当日ずっと一緒にいられない分、どうしても一緒に誕生日を迎えたくて。そしてそんな私の願いは、大学生になって親にワガママを言って始めた一人暮らしのおかげで、初めて叶いそうなのです!


「あー、んな気遣わなくていいのに」


亮はそう言って頭を掻く。でも私がダメ押しでもう一度入ってと伝えると、着替えを持って脱衣場へ向かっていった。













「ふー、いいお湯でしたー」


少し肌寒くなってきた、今日この頃。
でもお風呂から上がれば身体はポカポカ。そしてリビングに入ると亮がテレビを見ていて、私は心もポカポカに。


「おかえり」


カーペットの上に座っている亮が声を掛けてくれた。


「ただいまー」
「気持ち良かったな」
「ね、気持ち良かった」


亮の隣に座って、髪を軽くタオルドライ。時計を見れば、11時半の少し前だった。


「……あーあ」
「ん?」
「18歳の亮もさ、後30分で終わっちゃうね」

去年は、部活が無かった亮と楽しい誕生日を過ごしたなあ。あの日亮が言ってくれた言葉は、今思い出しても恥ずかしいけれど。でも、それよりもずっとずっと嬉しくて。


「ああ、確かに」
「また大人の階段登っちゃうね」
「ははっ、そうとも言うな」


一緒にお祝いするのは今年で4回目の亮の誕生日。……だけど。


「えへへ」
「…おいおいどうした、にやにやして」
「ううん。亮と一緒に誕生日迎えれるの、嬉しくて」


初めて、一緒に誕生日を迎えられる。大好きな亮の誕生日に、一番に顔を見ておめでとうを言える。それがね、思わずにやけちゃうくらい、嬉しいんだよ。


「……ひなこ」
「うん?」
「こっち、おいで」


突然そう言って、亮は自分の胡座の上を指さす。
…でも、言われた当の本人の私は、胸がキュンキュンしちゃって大変です。だってだって、おいでなんて!


「……ああっ、や、でも私まだ髪濡れてるし…」


いつもなら、喜んでその膝の上へ飛び込んで行きそうな所。しかし残念なことにまだ髪が生乾き状態なのを思い出して、ぐっと踏みとどまる。

「タオルドライ終わっただろ?」
「それは…そうだけど」
「俺が乾かしてやるよ」
「……ええ?」

亮が?私の髪を?どうして?
当然のように放たれた亮の言葉に、思わず戸惑ってしまう。


「……」


でも、そう言ってくれるなら。ドライヤーを持つ亮の胡座の上で、なるべく小さくなるように体育座りをする私。


「お願い、します」
「おう」


ブォォォ…。亮の返事からすぐに、聞き慣れた音と温かい風が私の髪を揺らす。

私の髪と頭を撫でる様にして、亮は乾かしていく。ドライヤーの温かい風と亮の手がとても気持ちが良くて、なんだか眠くなってきちゃう。


「熱くないか?」
「んー、気持ちいー」


…ああ、亮の手、気持ち良いな。ずっとこうして撫でていて欲しいな。こうして亮と、ずーっと一緒にいたいなあ。心地良さで目を閉じながら、そんなことを思った。



しばらく経って、最後の毛先の方を乾かしていたドライヤーの音が止んだ。


「まだ乾いてねー所あるか?」
「……あっ、えっと、うーんと」


亮に声を掛けられて、髪を触ってみる。…やばい私、暖かいし気持ちいいしで、半分寝てたかもしれない。

「ひなこ寝てた?」
「ねっ、寝てないよ!……ウンウン、乾いた!ありがとう!」
「ん、なら良かった」


ガタン。亮が、ドライヤーをカゴに戻す音が聞こえる。


「でもね、暖かくて気持ち良くてね、本当に寝ちゃいそうだったよ」

「亮、昔髪長かったから髪乾かすの上手なの…」



話しかけながら振り返ろうした私のお腹へ、後ろから腕が回って。そのままグイッと身体が引かれて、ぎゅうっと抱き締められた。


「……」


お腹に回っている亮の腕を見る。亮がピタッとくっついてくれているこの感じが、私はとっても好き。胸がきゅんってなるしね、亮のこと、好きだなってなるんだもん。
耳元にスリスリと何かが当たる感覚がして顔を向けると、亮と目が合った。ふっとして笑った亮は、優しく私のこめかみにキスをして。

「……」
「……なんだよ」
「えへへ、うーうん」

そう答えて首を横に振って、お返しとばかりに私が亮の鼻の頭にキスをする。一瞬驚いたように目を丸くした亮だったけど、もう一度笑って、今度は唇に優しい感触が。

それから何回も角度を変えてキスをされて、頭の中が蕩けそう。亮、好き。大好きだよ。もうね、それしか考えられないってくらい。とってもとっても、大好き……。



ぴぴぴぴぴ!


「……」
「……ああっ!」


携帯のアラーム音が聞こえて、私は慌てて亮から顔を離して時計を見る。時計の針は、12時を差していた。

再び顔を戻すと、亮が突然大きな声を出した私を驚いた顔で見ていた。



「亮!19歳の誕生日!おめでとう!」



そう言って亮へ抱き着く。ぎゅうっと、亮に負けないくらい腕に力を込めて。
そんな私の頭を優しく撫でてくれているのは、大きくて温かくて大好きな、亮の手だ。


「…サンキュ」


呟くみたいに聞こえてきた声を聞いただけでね、亮が笑ってるんだろうなあって、わかるんだよ。そして亮が笑ってるなら、嬉しいなら、私もすっごく幸せな気持ちになれちゃうんだ。

嬉しいも幸せも沢山くれるだーい好きな亮と、今年もずっと一緒に過ごせますように!亮!ハッピーバースデー!


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