○●○



「ねーいーじゃん」
「なんでやねん」
「けち!忍足のけち!…あ、跡部」

けちんぼな忍足と話していたところに、跡部が視界の端に映って声をあげた。オーラってすごい。

「おお、跡部やん」
「なんだ、こんなとこで喧嘩して」
「聞いてよ跡部!忍足がりんごジュース買ってくれないの」
「いやだからなんで買わなあかんねん」
「あーん?なんで買ってやんねんだよ忍足」
「んえっ?」
「だよね!ほーらー忍足ー!」
「あんな、跡部の感覚と俺の感覚は違ってやな」
「とは言えだぜ、りんごジュースくらい買ってやればいいだろ。それで喜んでくれんならいいじゃねーの」
「跡部って顔と態度に似合わず優しいよね…」
「ふふん」
「なんで嬉しそうやねん」

跡部って単純っていうか、あほっていうか。本当顔はいいのにもったいない。

「でもさ、跡部はこのあほっぽいところがいいよね」
「あーん?」
「せやなあ、ファンの人等もこういうとこ見たら「肉じゃがのことポトフですってぇー!可愛い跡部様ー!」ってなるんかな」
「それはもう言うんじゃねえ」
「出たー!跡部家末代まで言ってやろそれ!」
「お前末代まで跡部家と関係持つんやな」
「えーだって跡部このネタ弄ると可愛いんだもん」
「……」
「…おい、ちょっと来い」

跡部が私の手を引いて忍足から離れる。

「お前、忍足の前で俺の事良いように言うんじゃねーよ」
「え?良いように?」
「しかも末代までとかよ…いや、あいつって意外と嫉妬するじゃねえか」
「あ、うん。それはそうだね」
「だからな…ってなんで俺がんなとこまで気使わなきゃなんねーんだよ」
「は?」
「いい加減にしろ!この鈍感!」

ぱこっと跡部に頭を叩かれる。だってなんで私が忍足が嫉妬することを考えなきゃいけないの。気持ち悪い。…いや、それは言い過ぎか。

「何話しとるん、自分等」
「うわお!」
「ばっ、いきなり話しかけんじゃねーよ」
「やってめっちゃ面白いんやもん二人の話してる時の顔」
「あーん?……。いや、すまなかった忍足」
「は?なんで?」
「言わなくてもわかってるぜ。ま、りんごジュースくらい奢ってやれ」
「せやからなんでやねん」
「お前も、あんまり忍足をやきもきさせんじゃねーよ?」
「なんで?」
「…はあ。こんなことまで他人が言わなきゃわかんねーのか」

うん?なんだこの展開?

「好きな女のためならそんくらい金だしてやんのが男ってもんだろうが。好きな男のためなら他の男に色目使ってんじゃねえ」
「……」
「……」

待って、忍足ってあたしのこと好きなの?

「……」
「……」

忍足も同じような気持ちでこっちを見ているように見える。てか絶対そうだ。

「あ、跡部?」
「あーん?」
「私と忍足、付き合ってないよ?」
「…あーん?」



この直後、私と忍足が爆笑したのは言うまでもない。


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