○●○



「寒すぎだろい…」
「ううう、本当に寒い」
「凍える…」

「ゆーきだー!!!」

雪がちらほらと降り始め、昨日よりもぐっと外の気温も下がったのを実感する本日。

「アホが一匹…」
「可愛いっちゃ可愛いんだけどね」
「……」
「…仁王生きてる?」
「(頷く)」
「生きてるってよ」
「ひなこ先輩見てますかー?雪っすよー!」
「あーはいはい見てるよー」
「お前よくそんな元気だよな」
「いやー、やっぱり雪降るとテンション上がりません?」
「ううん」
「上がんねーよ」
「……」
「仁王に至ってはしゃべることすらもしないからね」
「あーもう!ほらほら!」

そう言って赤也が私の手を引いて立ち上がらせる。

「うわ!ひなこ先輩手冷た!」
「赤也はあったかいねえ」
「そっすよう!俺、心があったかい人間すから」
「ぷぷー!ねー聞いたー?」
「聞いたー」
「赤也ってさ、少年みたいで可愛いよね」
「おーわかるわかる」
「…ま、ブン太のパフェ見たときもなかなか少年やけどのう」
「お!復活早々いい事言うねえ、わかるわかる!」
「今は俺の話じゃねーだろい!」
「あ、でも仁王の人をからかうときもなかなか少年みたいにわくわくしてるかも」
「そんな少年俺嫌っす」
「俺もやだ」
「ご、ごめん」

「……待ってこれ俺が悪口言われる会話だったん?」

あんなに雪で喜んでいた赤也の顔が歪められて、変なことを言ってしまったと後悔。

「でもねー、赤也の手は本当にあったかい」
「あ、もしかしてひなこ先輩このまま俺と付き合っちゃいます?」
「付き合っちゃいません」
「ちぇー」
「私よりも、ほらほら寒そうランキング1位!赤也に手握ってもらいなよ」
「え…」
「ええっ」
「赤也もさ、握ってあげて?」

そう言って私はポケットに入っている仁王の手を、腕を引いて外に出す。そして私の手を握ったままのほかほかの赤也の手に近づける。

「おおお」
「冷った!氷みてー!」
「…赤也の手、ほんまにあったかいぜよ」
「ね、でしょ」

初めは怪訝そうな顔で自分の腕を引く私の顔を見ていた仁王だったけど、いざ赤也の手を握ると私とブン太の方を見て驚いた顔で呟いた。そして仁王の視線は自分と赤也の手の元へ再び戻る。

「…仁王、内心めちゃめちゃ喜んでそう」
「うん」
「……」
「……」
「てかなんか2人怪しいね」
「それ俺も思った」

赤也のあったかい手を握って嬉しそうにしている仁王は、まるで好きな人と初めて手を握った子のようで。いや、仁王が初めて好きな子の手を握った時のことは私には分からないけれど。

「ちょ、止めて下さいよ!」
「あ」

でも、赤也にはどうやら私とブン太の言葉は恥ずかしかったみたい。顔を赤くして仁王の手を振り払う赤也に、暖かさを失って切なそうな顔をする仁王。

「赤也酷ーい」
「先輩方がヘンなこと言うからでしょ!」
「……」
「あーあ、仁王可哀想」
「いや待って下さいよ、俺仁王先輩と手繋いでればいいんすか?それはなんか違うくね?」
「なんでだよ」
「そりゃ俺だってどうせ手握るなら男のごつごつしてる手よりは女の子の華奢な手がいいし!」
「まあ、一理あるね」
「でもお前、そんなこと言ったら元も子もねーだろ」
「そうそう。この中では仁王が寒がってるんだもん」
「だったら先輩方どっちかが握ってあげたらいいじゃないすか」

赤也はそう提案するけれど、私としては自分の体温を保つので精一杯なのだ。赤也のように有り余る熱量を持っていない限り、この寒い中氷のような仁王の手を握ろうとはさすがに思えない。私が言うのもおかしいかもしれないけど、でも、ごめんね仁王。

「いやあ私だとほら、何かが始まっちゃうかもしれないじゃん?」
「おー!そうそう!俺もほら、何かが始まっちゃうかもしれないじゃん?」

そしてそれはブン太も同じらしい。

「いやブン太はないでしょ」
「おい!せっかく乗ってやったのに!」
「待ちんしゃい俺にも選ぶ権利があるじゃろ」
「だとよ」
「え、私が選ばれない方?」
「どんまい」
「ちょっ、仁王!」
「まぁまぁ!ってわけで俺はひなこ先輩と手繋ぐんで、丸井先輩と仁王先輩でどうぞ」
「……赤也は要するに俺じゃ不満だと」
「ばっ、なんでまたそうやって誤解を招く…!」
「ええー!赤也最低ー!」
「超ヤなカンジー!」
「もうやだこの人達…」


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