◎不安な気持ち 心結side


「お疲れ様でーす」


部室のドアを開ける時に必ずこう言ってしまうのは、先輩がいた頃からのクセ。他のみんなは大体うーすって言っているけど、私と小春は、語尾にお疲れ様の後に"です"が付いたままだった。
私が部室に入ると、宍戸とジローが椅子に座っていた。


「あれ、今週掃除当番多いね」
「だな。同じクラスの俺と心結が被ってねーのに」
「ねー」


宍戸と会話しながら、ロッカーにカバンを入れる。


「そう言えば、昼の風紀委員なんだったの?」
「ああ、朝に校門に立つ人数が少ねーから、ちゃんとやれだと」
「…とりあえず宍戸は立ってないよね」
「朝練あるから仕方ねえだろ」
「んー、ま、それもそっか」


着替えを取り出しながら宍戸と話すけど、ジローは携帯を見ながら全然会話に入ってこなくて。
お昼休みの時も、その後も。思い返せば思い返すほど、ジローがなんだか変な気がしてしょうがなかった。

…やっぱり、何かあったのかなぁ。まさ、ジローに何かしちゃったのかな。


「あの、ジロー」
「んー?」
「昼休みの事なんだけ「お疲れ様ですー」


私が意を決してジローに聞こうとした瞬間、聞き慣れた声が部室に響いた。


「お、小春お疲れ」
「…今週掃除無い人少なかったんだね」
「小春は掃除してきたの?」
「うん、でもすぐ終わったんだけど…あ、私も着替え一緒に行く!」
「はーい」



「おい心結、ジローに何か話すことあったんじゃねーのか?」


小春との話が一段落したところで、宍戸が声を上げた。


「あっ、私もしかして話遮っちゃった?…私まだ準備とかあるから、それまでで良ければ話してて!」


少し戸惑ったように言う小春。そんな小春を見てからジローを見ると、バチッと視線がぶつかった。


「あの、心結…ごめん、その話後でもいい?」
「え?」
「俺、トイレ行きたくて」
「あああ、それは是非行って!私のはいつでもいいし!」


私がそう言うとジローは安心した様子で「宍戸も行こう!」と宍戸の返事を聞く前に部室を出ていってしまった。ドアが閉まって、2人の足音が遠ざかって行く。


「……」
「……」
「あ、今の隙にここで着替えちゃう?」
「誰も来ないかな…?」
「急げばいけるでしょー!」
「……」


不安そうな小春だったけど、私の言葉に促されて着替えを始め、それを見て私も急いで着替え始めた






その後、ジローと宍戸が帰ってきたのは部活が始まる少し前だった。ジローはすぐに謝ってくれたけど、本当は話したくないのかなぁ…。



<< しおり >>

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -